2021年
10月28日(木)

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岩手の風土、友情のきらめき ぼくらは森で生まれかわった 児童文学作家おおぎやなぎちかさん著 「人生の一歩」探る少年の姿描く

2021-09-14

「ぼくらは森で生まれかわった」の表紙

 岩手県の小さな町を舞台にした、少年たちの友情と成長の物語「ぼくらは森で生まれかわった」(あかね書房刊)が発売されている。東京都と北上市を行き来して執筆を続ける作者のおおぎやなぎちかさん(秋田県出身)=日本児童文学者協会会員=は、「岩手のおかげで書けた作品。ぜひ親しんでもらえたら」と思いを込める。

 岩手県の架空の町、花里市羽野町に生まれ育った小学5年の真(しん)は、河童伝説のある森で、都会から来た少年、順矢(じゅんや)と出会う。

 最初はぎこちなかった2人だが、徐々に打ち解け、夏休みの毎日を一緒に過ごすようになる。しかし、順矢の秘密と真のうそで、二人の仲には亀裂ができてしまう。葛藤し、もがきながら、真と順矢は交流の中で、「自分の人生をちゃんと生きる」ための一歩を探っていく。

 おおぎやなぎさん自身がよく散歩をする県内の森から着想を得た。物語を神秘的に彩るいくつかの伝説は、実在するものを登場させている。

 「何百年も生きている木や古い石、そういうものに込められた魂に引かれる。子どものころは考えないが、大人になると、周囲に自然があることの良さを感じる」とおおぎやなぎさん。

 少年たちが食べるキュウリやクルミ餅など、季節ごとの食も読み手を引き込む。「自然がきれいなだけでなく、その恵みがあって暮らしとつながっている」と、実感を込めて描写した。

 大らかな自然を背景に描かれるのは、人との関係や過去の失敗に悩む、少年たちのリアルな姿。

 おおぎやなぎさんは「どうしても傷つくこと、嫌だと思うことはあるが、そこでストップしてほしくない。自分を守るために休むことはあっていいけれど、もう一歩踏み出してほしい。そのために、周りの人の関わり方も大切」と強調。「物語はここで終わるが、この小学5年のひと夏が彼らの人生を支えてくれたらと思う。子どもたちに、そういう出会いがあってほしい」と願った。

 A5変型判207㌻。定価1300円(税別)。絵はイラストレーターの宮尾和孝さん。

 おおぎやなぎさんは日本児童文芸家協会会員、全国児童文学同人誌連絡会「季節風」所属、俳誌「童子」同人。「アテルイ 坂上田村麻呂と交えたエミシの勇士」(くもん出版)、第45回児童文芸新人賞受賞作「しゅるしゅるぱん」(福音館書店)など著書多数。



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