(本紙連動企画)好評連載! 居酒屋店主の 「岩手の馬に乾杯」

 「さらばタンポポプリンセス」  第8レースC1級 (3月24日)
 「あ、1頭残っています」と実況アナウンサー。06年8月26日第3レースのフューチュー新馬戦がデビュー戦。4番人気だった。互角のスタートを切ったはずが、10b走ったところで「止まってしまった」。馬たちがかなたに去ってから再び走りだし、トップと1分43秒遅れでゴール。
  鞍上にいたのはベテランの名手、関本淳騎手。「信じらんねえ。この馬、途中で走るのをやめたんだよ」と開口一番言ったとか。わずか850bを2分34秒1で走ったという記録は、おそらく今後も破られることがないだろう。
  「衝撃だった」と生産者の郷さん。「タンポポプリンセスの母馬はカズノタンポポといって、名古屋で20勝もあげ、東海の女王といわれた名牝です。そこでワシも期待を込めてパークリージェントを付けたんです」。「その子のデビュー戦があれですからな。ハハハ…」。
  心に傷を抱えた馬を立ち直させるのは難しい。しかし、まだ2歳。郷さんはあきらめなかった。それを温かく迎えてくれたのは小笠原厩舎だった。
  傷は優しさによってしか癒せない。人も馬も同じだ。面倒を見たのは、厩務員と大坪慎騎手だった。「もうレースには使えない」と見放された馬。時間はかかった。その年、出番はめぐってこなかった。
  「人間は怖くない」「ほかの馬たちは怖くない」「レースは怖くない」。翌年、3歳になった。6月2日である。3歳の最下級戦。「前科」があるにもかかわらず血統の良さを買われ3番人気だった。レースはとても危なけしげに見えた。フラフラしていた。だがファンの声援に応え2着でゴールした。初勝利はその2戦あとの4戦目に訪れた。そこからはとんとんと5連勝。
  「タンポポは頭の良い馬だ。一戦ごとにレースを学んでくれた」。
  きょうの第8レースが最後のレースになる。ここまで通算16戦して6勝、2着4回、3着2回という好成績。最後はちょっと力のあるメンバーがそろって上位は厳しいかもしれない。
  「来季も走らせたい気持ちもありますが、ここが潮時。繁殖に上げますよ」。「ノムさんもミーシャさんも引退レースの応援に駆けつけてくれるんですか。馬主みょうりに尽きます」。
  できれば、わたしも駆けつけて声援の一つも送ってやりたいが、平日なので仕事がある。現地で見ればきっと涙も出るだろう。それはいささか恥ずかしい。なので、きょうだけはほかのみんなに任せよう。
  「それではいつもの店でタンポポのお祝いといきましょうか」と郷さん。
  ええ、どうぞ、皆さんいらしてください。タンポポの嫁入りに乾杯だ。                           (居酒屋店主)
 「ドカンとはると決めたなら」  トウケイニセイ記念 (1月14日)
 「苦手なものは、ここ一番の大勝負。ドカンとはれば当たり馬券が逃げていく」と競馬オタクのマモルくん。「欲望に目がくらむせいなのか、思い入れが強過ぎるせいなのか。いつものことだが悩ましい」。
  トウケイニセイ記念。「軸は鉄板の@テンショウボス。取りこぼしはまず考えられない。あとはヒモを決めればいいだけだ」。冬競馬の最終日。「ドカンと今季の収支を取りかえしたい気持ちはまだある」。
  ドカンとはると決めたなら相手は黙って前走値。白嶺賞組のJダイワフォーチュンとCタイキリオン。馬券も王道の馬複でいいだろう。「臆病風に吹かれてしまったならば」、それは仕方がない。「今季の収支のことは忘れて、このレースを当てることに徹しよう」。@軸三連相手BCDEFJ。また春に会いましょう。
                                                       (居酒屋店主)
 「目標、1点買いの万馬券」 六華賞 (1月 6日)
 「目標、1点買いの万馬券」。うれしいね。愛妻家の塩釜さんからの年賀状。こちとら三連複10頭ボックス買い120通りでなんとか万馬券を仕留めたことはある。けれども、1点買いの万馬券なんて夢のまた夢。こんな神業のような馬券を狙う心意気をたたえよう。
  そしてまた、新年早々こんな馬券話も聞こえてきた。「狙いに狙った馬から勝負して馬単1点買い」。これまた1点買いの心意気。「ところでなんぼ買ったの?」。「新年のおさい銭気分で100円さ。けちったから1着2着が逆に来たのかね。馬複にしとけばよかったな」。ハハハ、やはり競馬はどう転んでも楽しいね。
  六華賞。1点買いの万馬券を狙うなら三連複のBDEしかないだろう。けれども常識的に考えればAトウショウグローズ軸の@CFG流しだろう?                                         (居酒屋店主)
 
   岩手の馬に乾杯       筆者紹介 居酒屋店主(中村 守) 

 1961年、盛岡市生まれ。盛岡市内で居酒屋を営む。あのころ僕のヒーローは小西重征騎乗のウィスカーだった。そして30年。競馬場にむかうとあのころのトキメキがいまだに甦ってくる。だから僕はペンを執った。 このトキメキを伝えるために。

 
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