2004年 1月 4日 (日)        

■ 入会金なし 会費は食費 みぐみの会

  盛岡市西松園3丁目、西松園内科医院の通りを挟んで向かい側に建つしゃれた造りの一軒家。毎週水曜日になると絶え間なく笑い声が聞こえてくるその家の名は「めぐみの家」。地域に住む高齢者などの自立を支援するNPO法人「めぐみの会」(渡部稲子代表)が、3年前から運営している。毎週水曜日の午前10時ごろから地域に住む高齢者やボランティアら15人ぐらいが集まり、午後3時までの時間を一緒に過ごしている。

笑い声が絶えないめぐみの会のメンバーたち
【写真】 笑い声が絶えないめぐみの会のメンバーたち
 メンバーはやって来ると居間に集まり、一つのテーブルを囲む。活動内容はお茶を飲んだり昼食を食べながらのおしゃべり。デイサービスと違い、入浴やレクリエーションなどの活動はなく、それぞれが自由にゆったりと1日を過ごす。

 出席すると言っていたメンバーが時間になっても来ないと心配して何度も電話をかける。受話器を持つメンバーが「息が荒い。おかしい」という言葉に緊張が走る。結局何でもなく元気で姿を現すと全員で大喜び。病気でしばらく顔を見せなかったメンバーが歩いて来るのが見えると、到着する前から全員で「来た、来た」とまた大騒ぎ。「自分が来たことでこんなに喜んでもらえる所なんてない」とメンバー。「久しぶりでいっぱいしゃべった」「1週間に1度、大きな声で笑える」と毎回笑顔で帰って行く。

 同会に登録しているのは40代から80代までのボランティアと高齢者約30人。昼食はそれぞれがおにぎりを持ち寄り、みそ汁やおかずはボランティアが作る。後片付けは高齢者といつの間にか役割が決まった。会費は参加した日の食費300円だけ。入会金などは一切無い。

 ボランティアと高齢者には与える、与えられるという区別がなく「出来る人がやる」という分担だが、ボランティアの中には保健師やヘルパーの資格を持った人たちもいるため、調子が悪そうなメンバーへの気遣いは忘れないようにしている。

 いろいろな人たちが訪れてコンサートや紙芝居をしてくれたりするほか、自分たちでも鉢巻きを縫って地域の幼稚園に届けたりと奉仕活動も活発に行っている。

 同市松園の吉田キミさん(79)が同会を初めて訪れたのは2年前。同医院の看護師に教えてもらい、診察の後に寄ってみた。入り口の階段を何段か上がったが決心が付かず戻ったとき、中から楽しそうな笑い声が聞こえた。もう1度上がってみると庭木をいじっていたボランティアが「どうぞ、上がってください」と笑顔で招き入れてくれた。

 笑いが絶えない和気あいあいとした雰囲気に驚いた。「今まで松園に住んでいてこんないい所があるとは知らなかった」と思った。それからはほとんど休まずに毎週参加している。

盛岡市西松園3丁目に開設されためぐみの家
【写真】 盛岡市西松園3丁目に開設されためぐみの家

 世界情勢が不安定な今の時代。会の中では面白おかしいことばかりではなく、社会問題について討論することもある。「太平洋戦争を経験したわたしたちにとってはつらい」と自分の気持ちをぶつけたりもできる雰囲気だ。

 「皆気持ちのいい人たちで、年齢を超えたきずながある」と言うように、人間同士の付き合い方、助け合いの気持ちが一致した人たちが集まっていると言う。「癒やしの代表的なところ。ありがたい」と思いながら通い続けている。

 最近ヘルパー2級の資格を取った佐々木幸子さん(47)はボランティアの友達に紹介されて同会に登録。職に就く前に経験を積もうと思ったが、やって来る高齢者の元気な様子に圧倒された。

 介護度の高い人が多いデイサービスでの研修では入浴、昼食、レクリエーションと忙しくコミュニケーションを取るのも大変だった。手が空いた人が食事を作り、高齢者が片付けるという一方通行ではない会の在り方が心地よい。「こういうふうに年を取りたいと思うような魅力的な高齢者ばかり。こちらの方が癒やされる」と話す。

 西松園内科医院の齋藤恵子院長が空き家に気付いたのは3年前。高校時代からの友人藤元眞紀子さんに声を掛け、同会を結成。「めぐみ」は齋藤さんの名前の恵子の字から付けた。

 数年前、齋藤さん自身が痴ほう症の母親を施設に連れて行ったとき、若い職員が赤ん坊をあやすような態度で高齢者に接していたことに嫌悪感を感じた。レクリエーションはトランプやボール投げなど幼稚園児を対象にしたような内容。食事は窓に向かって1列になって一斉に食べる。「介助しやすいのは分かるが、皆で向かい合って食べた方がおいしい。もっとこの方たちのしたいことを聞いてあげればいいのに」と思った。忙しい家族の中で、いつの間にか痴ほう症になっていた母親。夜遅く帰宅する家族を待つ一人での留守番。会話がなく、脳が刺激されずにだんだんと痴ほうが進んでしまった。「母が持っていたたくさんのものを引き出すような場があればよかった」という気持ちが同会の立ち上げにつながった。

 自分の世話ができなくなって施設に入る日が来るとしても、それまでの時間をできるだけ延ばしたいと思う。料理や裁縫などそれぞれの得意な能力は、一人暮らしや施設での生活の中では失われてしまう。その能力を次の世代に伝えることは高齢者自身の誇りにもなり、能力の低下を防ぐ。次世代の人にとっても生きる知恵をもらうことにつながると思う。

 同家は週に2回は同会以外の活動に使われているが「毎日この家に電気がつくようになればいい」と願う。地域に密着した小規模な形。「こういうものがあちこちにできるのが理想的だと思う」と話す。

 同会を「地域のセンターにしたい」と藤元さん。職場でストレスを抱えた人が回復する場になったり、コンサート会場になったり、中学校の総合学習の場になったり。地域の中に同会は確実に根付いてきている。「どんな人にも居場所のあること、あなたを待っている仲間がいることに気付いてほしい」と願っている。


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