|
盛岡市紺屋町の深沢紅子野の花美術館は作品を春の展示に衣替えした。季節ごとにテーマを設けて作品を入れ替えてきたが、今回から1作品にスポットライトを当てて、かつ全体を見渡してもらう展示に転換。初回は「笛吹く農婦」という一水会出品の油彩画を取り上げ、戦後の一時期に暮らした雫石町とのかかわりを浮かび上がらせている。
|
|
|
 |
|
|
【写真】深沢紅子の「笛吹く農婦」
|
|
|
|
|
|
|
雫石町所蔵の「笛吹く農婦」は1967年の作品。50代半ばの当時は長い画家生活の中でも最も充実した時期にあり、同年の第21回女流画家協会展で「てっせん」が日航賞を受賞した。
戦後、盛岡に帰郷した深沢省三・紅子夫妻は一家で46年、雫石町に入植。わずか2年で盛岡に戻るが、この時の縁で長男龍一さんが町内の大きな農家の娘だったとしさんと結婚することになる。としさんは一家の台所を一手に引き受け、紅子さんも画業に力を入れることができた。
モチーフは、いわゆる雫石あねこ。このモチーフは省三がよく描いており、重石晃子館長は同じアトリエを使っていたときは同じポーズの同じモデルを一緒に描いたこともあると解説する。
早朝のすがすがしい空気の中に若い農婦の吹く笛の音が響くようで、足元に描かれた花が朝露にぬれたようにしっとりとしている。重石館長は「朝露を感じさせる白っぽい背景が何とも柔らかい。対照的に紺絣(かすり)が引き立つ。背景を描かないことで時を超え、ちっとも古さを感じさせないのが不思議だ。むしろモダンさが紅子先生にはあった」と話している。
「当時の画壇は抽象的な作風が大はやりだったが、その流れの中で紅子先生は動じることなく自分のペースを守っていた。それが今見ても古くならないことにつながっているのでは」とも。
今回、ほかにも絣姿の女性の絵2点が展示されている。このうち「雫石あねこ」は86年に描かれた油彩画。重石館長によれば、紅子が雫石町の民家にあった石臼をとても気に入り、所有者からもらった礼にこの絵を贈ったという。笠のひもの薄桃色、手首に巻き付けられた赤と青のひもが伝統的な衣装の中にもモダンさを生み出している。
野の花の水彩画はタンポポやカタクリ、てっせんなどの作品を展示。今期展示は6月17日まで。
|