2004年 5月 4日 (火)       

■ 〈合併〉メリットをどう住民に 玉山村と矢巾町の場合

 盛岡市、矢巾町、玉山村による盛岡地域任意合併協議会が3月に発足し、3市町村の枠組みによる合併の検討が始まった。8月までの新市将来構想の策定と事務事業調整案の完成を目指し、事務方の作業はスケジュールに追われるように進むが、住民の合併への関心は、いまひとつ高まっていない。生活圏が広域化しているとはいえ、環境が大きく異なる都市部と農村部。「合併によって何がプラスになるのか実感がわかない」との声も聞かれる。盛岡市が新しいまちづくりを呼び掛ける矢巾町、玉山村の住民は動き出した合併協議をどのように見詰めているのだろうか。

■ 玉山村

 「喜んで合併しますという雰囲気ではない。しかし、単独でやっていきますと、けっぱっていてもどうにもならない」。玉山村の嵯峨忠雄村議会議長は玉山村の置かれた状況をこう表現する。任意協議会は始まった。しかし、地域の集会などでも積極的に合併が論議されることはほとんどない。

 「商工業を中心とした盛岡市と開拓の歴史があり大規模農家が多い玉山村。あまりに環境が違う。都市と農村がミックスされてどのようなメリットが生まれるのか。まだ見えてこない」。

 同村議会では広域行政問題調査特別委員会に行政・財政、保健・福祉、産業・建設、教育・文化の四つの専門部会を設置。合併した場合、単独村政を継続した場合の両方を想定したシュミレーションと調査を続けている。村議の一人は「村の財政が単独であと何年持つかと問われれば、3年そこそこといった感触。それも、工業団地などの分譲が計画通り進めばの話」とため息をつく。

 景気回復の兆しが見えたと言っても、地方のすみずみまで波及するのには時間がかかる。税収の伸び悩みに加え、膨らんだ村債の返済、伸び続ける扶助費の支出と重い課題がのしかかる。さらに、国の三位一体改革による地方交付税の大幅削減が財政難に拍車をかけた。

 交通アクセスが良く、盛岡への通勤通学にも困らない。豊かな自然が豊富で石川啄木の古里としての知名度もある。「村の良い部分はたくさんあるのだが…」。昨年2月のアンケートでは盛岡との合併を望む声が4割を超えていた。しかし、反対を唱える声も少なくないという。

 「盛岡が合併を急ぐのは盛南開発など遅れている中心部の開発を進めたいからでは。周辺地域は後回しになるとの不審感が根強い。今の段階ではメリットも、デメリットもはっきりしない。すべてはこれからだ」。

 任意協議会は、こうした声に率直に答える成果を導き出さなくてはならない。

■ 矢巾町

 矢巾町は「任意協議会は情報収集の場である」とのスタンスを再三、強調してきた。盛岡市が合併ありきで協議を進めることに対しては、抵抗感を感じる町民も少なくない。町議の一人は「任意協での議論の経過を住民が納得いくように説明ができれば、住民の7割が合併賛成に回るのでは。納得できるような内容でなければ反対。五分五分の状況だ」と揺れる町民の心情を分析する。

 「個人的には合併反対」という男性は「盛岡は城下町で商家の旦那様同士の付き合い。在郷には在郷の付き合い方というものがある。そういう歴史を無視して、改革を進めようとしてもうまくいかない」と主張。一方、「これだけ車社会が発達し、便利になった。垣根を越えて付き合うのが自然の姿。一緒になっても不思議はないということかな」とも語る。

 長年、同じ郡内で協調してきた紫波町との関係を懸念する声も目立つ。矢巾町不動地区の農業高橋邦夫さん(78)は「合併に反対というわけではないが、よく実態を把握して進めていく必要がある。農協も旧紫波郡でまとまっている。紫波町を抜きに合併を考えるのは問題があるのでは」と指摘する。

 若い世代は合併をどう考えているのだろうか。町内に住む20代の女性会社員は「説明会が開かれても出席するのは年輩の人がほとんど。若い人たちが合併問題に触れる機会はほとんどない。合併のメリット、デメリットを問われても正直、ちゃんとした答えが言えない」と本音を明かす。

 町民劇場の制作や中小小売商業高度化事業の策定など、まちづくりに積極的にかかわる横澤雅弘さんは「借金で首が回らなくなっているのは盛岡地域に限ったことではない。3市町村による合併の枠組みが良いかどうかは、まだ分からないが、次世代に良い地域をバトンタッチしていくためには、先送りせず、考えていかなければならない問題」と真しに受け止める。

 南矢幅の40代の男性会社員は「合併することで人間の交流ができ、そこから新しい発想が生まれると思う。県都として盛岡市は県全体を引っ張っていかなくては。今、苦しいから合併というのではなく、将来の苦しさを乗り越え、発展する大胆な発想が必要」と合併の推進に前向きな考えを語った。

■ 任意合併協議会

 3月に発足した任意協議会は、これまでに2回の会合を終え、5月17日に開かれる3回目の会議から、いよいよ3市町村の合併を想定した事務事業の調整などの協議に入る。協議のたたき台となる3市町村の事務事業・行政サービス水準比較表や合併による事務事業の一元化に向けた調整方針案の作成は、総務、企画、財政など11の専門部会の下に置かれたグループ会議が担当。3市町村の課長補佐、係長級職員がテーマごとに集まり、約120項目に及ぶ協議項目について作業を進めている。

 協議項目の中身は、税金や条例規則の取り扱い、ごみ・し尿処理、上下水道、市町村立学校の通学区域など特に住民の暮らしと密接にかかわる問題に絞られている。

 福祉事業などにかかわる補助や給付、使用料・手数料など市町村によって開きが大きく、調整が難しい項目については、7月の第6回任意協議会を最終目標に話し合いを重ね、3市町村の足並みがそろったものから順に協議のテーブルに乗せる段取り。合併の方式、議員定数と任期の取り扱いなどは直接、任意協議会の場で話し合われることになる。

 現状の行政サービスの水準は低下させないが、経常的経費、投資的経費のバランスが取れた健全な財政運営を目指すというのが合併の基本方針。一見、相対する二つの方針を両立させるのは簡単ではなさそうだ。


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