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Dつかまえる−ひっつかめぇる、つかむ−ひっつかむ、おさえる−おしぇる
「そいづ、ひっつかめぇでけろ」「それ、ちゃんとひっつかんでろ」「どろぼ、ひっつかめぇる」などと言う時の「ひっつかまえる」「ひっつかむ」の「ひっ」も同様に単なる強調で「引く」という意味はありません。
「ひっつかめぇる」「ひっつかむ」は盛岡でも周辺の在の言葉で、町方の人は「おしぇる(「おさえる」の盛岡訛(なま)り)という言葉を使って「おしぇでけろ」とか「おしぇでけで」などと言いました。「おしぇる」というと「教える」と混同しそうですが、「教える」の方は「る」が高くなり、「抑える」は「しぇ」が高くなります。
Eまくりあげる−ひったぐる
「きもののすそ、ひったぐられだ」などという時の「ひったぐる」は「引きたくる」の促音化した言葉で、引っ張って「たくる」ことです。「たくる」は、まくるとか、奪い取りという意味です。共通語の「ひったくる」は奪い取るという意味ですが、盛岡弁では、まくる、たくしあげることをいいます。
共通語の「ひったくり」は不意に他人の持ち物を奪い取ることですが、盛岡弁で考えると、スカートめくりになってしまいます。(実際には「ひったぐり」などという盛岡弁はないようですが)
F引き切る−ひったぎる
「ひっつみ、ひったぎる」とか「ぼろ、ひったぎる」などという時の「ひったぎる」は鋏(はさみ)や刃物を使わずに、引っ張って切ることで、「ひきちぎる」の訛りで「ひっちぎる」を経て「ひったぎる」になったものでしょう。
「ひっつみ」は南部の郷土料理の一つで、共通語の「すいとん」です。
この「ひっつみ」も「引く」「つむ」二つの動詞が複合して引っ張って、摘んで(指先で挟み取る、つまみ取って)作るもの、という作り方を説明した言葉です。
Gくっつく−ひっつぐ
「いださ(板に)べだっとひっついではなれね」「のりぁ(糊が)てさ(手に)、ひっついで、きみぁわりい(気持ちが悪い)」などという時の「ひっつぐ」は、「つく(付く)」の強調です。「引き付く」ー引っぱられるように強く付く、ということでしょうが「干付く」(乾燥して付く)とも考えられます。
Hひきちがえる−ひっつげぁる
「ぶっころんで(転んで)ひっつげぁだ」「ねでで(寝ていて)かだ(肩)ひっつげぁだ」などという時の「ひっつげぁる」は「引きちがえる」の促音化です。「ひっつげぇる」とも表記できますが、舌を微妙に動かして「ひっつげぁる」とする方が盛岡弁らしさが出るようです。
Iつぶす−ひっつぶす
「ほれ、かまどむしぁ(ごきぶりが)いだ。ひっつぶせ」などという時の「ひっつぶす」は「引きつぶす」の訛りで「つぶす」を強調した言葉です。「引きつぶす」というより「挽きつぶす」とすると、イメージがわいてくるはずです。「ひく」は「挽く」という意味にもなります。
J力をこめて抜く−ひっつまぬぐ
「でえご(大根)、ひっつまぬいできた」「くぎ、ひっつまぬぐ」という時の「ひっつまぬぐ」は「ひきつみぬく」の音便化で、引く、摘む、抜く、という三つの動詞が一語になった言葉でしょう。
Kたれちらす−ひっつらす
「そごらへんさ、ひっつらがさねで」という時の「ひっつらがす」は「ひりちらかす」の音便化した言葉です(「ちらす」は「つらす」に近く発音されます)。「ひる(放る)」は「たれる」と同じ意味で、体の中から外へ出すこと、つまり排泄(せつ)行為を表わす動詞です。排泄して、散らばすというのが文字通りの意味です。
辺り一面、乱雑に、汚らしく散らかしている時にはこの「ひっつらす」がぴったりでしょうが、荒っぽい品のない言葉ともいえます。「ひっつらす」は「ふっつらす」と訛ることも多く、「ぶっつらす」と濁音化することもよくあります。
Lはがす−ひっぺがす
「かべさ(壁に)はってら、すんぶん(張っている新聞)、ひっぺがすてけろ」という時の「ひっぺがす」は「ひっぱがす」の訛りで引きはがす、という意味です。
標準語風にすまして「ひきはがす」というより、「ひっぱがす」の方が、迫力がありますし「ひっぺがす」と言うと、さらに俗っぽくやくざな味が出てきます。
(岩手医大教養部教授)
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