2004年 6月 5日 (土)       

■ 昔ながらの荒壁打ち 伝統工法で土蔵を移築

 住宅会社のゆい工房(滝沢村巣子、川原徳昭社長)が進めている古い蔵の移築作業で、土壁塗りで今では珍しい伝統工法の荒壁打ちが行われている。土壁材料を直径15センチほどの球体にして壁面に投げるようにぶつけ、ならす方法。蔵は近年、解体、移築されることも少なくないが、工期の関係や職人の不在などから別の工法にすることが多いという。この工法の場合は壁面を仕上げるまで3回を要し、蔵の移築工事が完了するのに1年ほどかかる。

球状にした壁材を投げつける左官職人
【写真】球状にした壁材を投げつける左官職人


 蔵は大迫町に建てられた土蔵。棟札から1912年築と分かる。所有者の夫婦が亡くなり、子供も県外で生活しているため。数年来使われることなく、母屋は既に解体。蔵も解体する計画だった。紫波町の山田左官工業が同工房に「何とか使ってほしい」と移築、活用の話を持ちかけた。

 川原陸子会長、川原社長らが蔵を見学。川原会長は「研修などで視察に行くと蔵を美術館にしたりいろんなことに活用している。蔵も面白い、材料がもったいないと思った」。蔵は川原会長が施主となって移築している。移築先は自宅や会社のある巣子。本家の敷地内となった。

 山田左官工業では復元の際、荒壁打ちを若い職人に経験させたかったという。職人はだれも未経験で、経験者を招いて指導を受け作業にかかった。

 この蔵では、大迫での解体時に壁材を残して木材などと一緒に移築先に運んで半年ほど寝かせた。これに新しい砂と土、わらを加えて水でこねて壁材を製造。粘土質の堅めの泥のようになった壁材を球体に手で整える。子供のころの土遊びを思い出させる作業だ。

 これを職人が壁前に立ち、投げるように腕を振って小舞(壁の木枠)にぶつけていく。小舞に巻き付けたシュロ縄を団子の中にたすきかけ、壁面を粗くならしていく。この作業を10数人の人手で1日に1面ずつ進めていくため、作業は6日まで続く見込みという。

 壁塗りはこれが第1段階。乾いたあと中塗り。さらに乾いたあと白しっくいを塗り仕上げる。

 川原会長は「今の職人はこういう手法をしたことがない。90年前の職人にどんな技があったのかを見せられたらいいなと思っている。初日にやってみたが、面白い。すごい技とも思った。若い職人が自分の造った家がどういうふうに見られるかを考えることになるのでは」と話す。

 規模は約39坪(128平方メートル)。復元は室内を明るくするため、窓を二つ増やしたが、土台や柱のクリ材はすべて、梁のアカマツ材は傷みのあった1本を除いてそのまま使った。床材も下床に活用し、その上に新しい材を使った。クリの親柱1尺1寸(77センチ)のものが使われていた。しかも「建てたとき、古い材も使い回しされている。明治や江戸時代の材が使われているかもしれない」(川原社長)。

 完成後は「ギャラリーや地域の人々に使ってもらえるようなこともしていきたい」と川原会長は話している。


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