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昔あったど。ある所に太郎という牛方あったど。牛三頭さ魚荷つけて、沢内さ通っていたど。ある日、山伏峠の頂上で昼飯食う気になって、火を焚いて魚をあぶっていたれば、大きな山男がひょっこらやってきて焚き火さまたがってあたったど。そして「ああ、魚の臭いする、魚の臭いする」と言って鼻をひくひくしたど。
太郎はおっかなくなって青くなったど。そして「そうともさ、魚荷をつけてきたもの、魚臭いするのはあたりめぇさ」と言ったど。山男は「そんだら、その魚を俺さけろ」と言ったど。「これは人から頼まれたものだから、けられねぇ」と言ったど。
すると山男は「けられねぇがったら、お前をとって食うぞ」と言ったど。そこで太郎は仕方ねぇぐ、魚荷を牛の背からおろしてけだど。山男は「ああ、うめぇ、うめぇ」と言いながら、見てる間にペロリと食ってしまったど。そして「もう少しけろ」と言ったど。
太郎は「あどはわがんねぇ」と言ったど。山男は「そんだば、お前を取って食うぞ」と言われ、仕方ねぇがら、また魚荷やったど。「ああ、うめぇ、うめぇ」と言ってまたペロリと食ってしまったど。そんなことで山男は牛三背中分の魚荷みんな食ってしまったど。
そうしてから、山男は「何かけろ、俺の言うこときかねぇがったら、お前を取って食っぞ」と言ったど。太郎はおっかねぇもんだから「そんだら、その牛でも食え」と言ったど。太郎は、山男が牛三頭食ってるすきに、どんどん逃げ出したど。
太郎ははせで、はせで行ったれば、舟はぎがいだったど。「今、俺は山男に追っかけられて来た。助けてけろ」と言ったど。舟はぎに「そんだら、そこにある舟でもかぶって隠れていろ」と言われ、太郎は舟をかぶって隠れていたど。そごさ山男来たど「舟はぎ、舟はぎ、いまここさ牛方来ねぇがったが」と言ったど。
舟はぎは「おら知らねぇ」と言ったど。山男は「うそまげろ。へだにごまかすとお前を取って食ってしまうぞ」と言ったど。舟はぎは、たまげて逃げ出したど。そして行くど行くど、大きな川の渕があったど。その岸に大きな松の木があったど。それによじ登っていたど。
そごさ、山男が追っかけて来て「お前は、なじょにしてそんな高え所さ上がった」と言ったど。舟はぎは「俺は、そこにある大きな石を背負って上がってきた。木に登るには石を背負わねぇば、わからねぇもんだ」と言ったど。山男は、それをほんとにして、そこにある大きな石を背負って木をはい上がってきたど。
もう少しで舟はぎのいる枝さ手が届くとこまで、上がってこられれば、舟はぎは「これは、たまったもんでねぇ」と思って、のこぎりでその下の枝を切っておいたど。それども知らねぇで、山男がその枝にたもつくや、ビリビリと枝がさけて折れたど。山男は大きな石を背負ったまま、下の深え渕さ逆さまにダブンと落ちて沈んでしまったど。それで、牛万と舟はぎは助かったどさ。
どんどはれ
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