2004年 9月 6日 (月)        

■  〈五線譜の向こうに〉46 林芳輝 「子供には歌えない童謡」

 近年「童謡を歌う会」という会がたくさん誕生している。オトナたちの会である。

 どの童謡曲がどの年代の児童を対象として作られているのか不明だが、童謡曲の歌詞を読むと、かなり難解なモノがある。だからオトナの会なのか?

 童謡詩を書く方々も、対象児童年齢にはこだわらないのかもしれない。その件については、童謡詩人とじっくり時間をかけて議論をしたいものである。

 古代には「わざうた」といい、〔神が人の口を借りて歌わせた流行歌を指した〕と平凡社音楽大事典に書かれている。

 江戸時代の文政3(1820)年ころ童謡集が出て〔わらべうた〕を意味したが、明治以降は子供の歌を意味するようになった。しかしこの流れが教育用に転用され、それが今日の唱歌となった。そのほかに作曲家が子供に歌わせるために作った曲を童謡といい、厳密には創作童謡という。これに対してわらべ歌は自然童謡と称する。

 8月29日に日本童謡協会が主催する童謡祭が東京で開催されたが、これは1918(大正7)年「赤い鳥」が創刊されて興った童謡運動の流れと趣旨を含んだ催しである。その趣旨とは「低俗な読み物と俗悪な子供の音楽を排除し、子供の真純な感情を保全…」である。鈴木三重吉・北原白秋が中心になった運動であり、この流れが現代の童謡運動である。しかし日本童謡協会が主催する中身がだんだん怪しくなっている。

 少々筆が脇道にそれるが、儒学者の家系で作曲家・本居長世(1885・4・4〜1945・10・14)は童謡歌手育成の先駆者である。本居は自作の童謡普及のために自分のお嬢さんを歌手に仕立てる努力を重ねたほど。十五夜お月さん、通りゃんせ、青い眼の人形・七つの子・汽車ポッポ・めえめえ小山羊の傑作がある。

 さて日本童謡協会会員は全国的で作曲家と詩人が参加する大所帯である。協会入会は資格を問わないのでアマチュアも大歓迎である。

 童謡祭に出品・演奏された作品は、出版・CD化され発売される。出版・CD化・発売は、地方在住のアマチュア詩人・作曲家にとってはステータスシンボルで一種の名誉となる。そういう地方の詩人たちから筆者も再三、作曲依頼を受けたことがある。今回の作曲もしかり。その場合、筆者は不都合と芸術性に問題があるときは相談して訂正を求めることにしている。

 作曲家の立場から見れば、総じて詩が長過ぎる。また楽譜を見ると、低学年児童に歌わせるには困難、そしてピアノ伴奏型が保育所の先生方に弾いてもらうには難しい曲が多い。

 今、日本童謡協会は曲がり角にきている。理事たちも内情に気付きながら「改革方法と処置に困惑の状態」というのが現状である。(岩手大学名誉教授)


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