2004年 9月 7日 (火)        

■  〈美術〉松本竣介を支えた友人 畑山昇麓コレクション展

 画家松本俊介を支えた友人、畑山昇麓(1913〜88)のコレクション展が10月3日まで、東和町の萬鉄五郎記念美術館で開かれている。同館には畑山の没後、遺族から約200点の作品が寄託され、常設展にコレクションコーナーを設けて紹介してきた。今展は畑山が収集作品を寄贈した神奈川県立近代美術館と岩手県立美術館収蔵の松本作品の一部を合わせて展示する企画展として大がかりなものになっている。

澤田哲郎「焼きいも屋」
【写真】澤田哲郎「焼きいも屋」


 畑山は盛岡市に生まれ、旧盛岡中学で学んだとき、同級には松本と舟越保武がいて、交友が生まれた。特に松本とは親しく、生涯、彼を慕い支え続けた。自身は中学卒業後、婦人服業界で服飾デザイナーとして活躍した。

 36年から美術作品の収集を始めたが、松本との交友が大きく影響しているとはいえ、その美術作品を見る目は名声にとらわれない、自身の感性に沿ったもので、後に名を上げる作家の無名時代の作品も多く収集していた。今展は畑山の目の確かさ、鋭さを証明する展示とも言える。

 今展の中では、神奈川県立近代美術館所蔵の松本の作品が、県内で鑑賞できる貴重な機会をつくり、目玉となろう。「橋(東京駅裏)」(油彩)は都市風景を描いた作品群の中でも知られている一つ。橋の絵では「Y市の橋」が有名だが、41年12月の今作は戦争の空気に押し黙ったかのような表情の風景を感じさせる。

 「少女」(油彩)は47年の作品。画面全体に塗り込められた赤に黒い絵の具で輪郭を描いた。赤の持つ情熱的で躍動的な印象とは逆に人間の弱さの伝わる静寂さを秘める。

 岩手県立美術館の所蔵品はデッサンが主体。墨の「自画像」は40年ごろのもの。若く繊細そうな松本が描かれている。

 同記念美術館のものでは「畑山君二日酔の図」が珍しい。最後まで手元に置いていたという水彩とインクの小品は、いすに腰掛けた畑山をデッサンした。腹下で両手を重ねる畑山は不機嫌な表情をしている。

 ほかの作家のコレクションでは、松本ゆかりの澤田哲郎、高橋忠弥、麻生三郎らの作品が見られ、松本が影響を受けた野田英夫の作品も10点ほど展示している。

 平沢広学芸員は「松本俊介にゆかりのある友人や影響を受けた画家の作品はもちろんだが、日本の近代、戦後美術の個性的な人たちの作品をコレクションしている」と傾向を解説する。

 しかし、畑山の美術に対する関心はそれにとどまらない。「県内の良い作品を作っている若手作家の作品を有名無名にかかわらず集めていた」と平沢さんは言う。「学生のころ初めて開いた展覧会のオープニングにふらりと表れて購入していった」というエピソードを残し、松本と一緒に語られるのはごく一面と思わせるほど、美術眼にたけていた。

 今展では、今でこそ美術家として高い評価を得ている作家の初期の作品も見ることができる。


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