2004年 10月 5日 (火)        

■  息吹き返す方言 藤沢昭子さんが冊子「ひぼどから聞き語り控」

 滝沢村の古文書解読研究者、藤沢昭子さん(60)が、自身の還暦の誕生日に合わせて「ひぼどから聞き語り控」を発刊した。盛岡、滝沢、雫石、沼宮内の4カ所で、日常の中で使われていた方言を集めたもの。遊び、虫、植物、生活(くらし)の4分野に分けて、今では聞かれることがないものを含め、写真や図入りで掲載している。

藤沢昭子さんと「ひぼどから聞き語り控」
【写真】藤沢昭子さんと「ひぼどから聞き語り控」

 「ひぼど」とはいろりのこと。昔はいろりの周りに家族が集まり、親や祖父母が行う縄ないなどの手仕事を見て子供たちは育った。現在は、食事を終えるとそれぞれの部屋に閉じこもってしまうのが典型的な家族の姿。「いろりがなくなって大事なものも失ってしまったのではないか」という危機感を込めて題名にした。

 執筆を思い立ったのは2年前。大野村の村誌編さん委員を依頼され、3年前から地域の高齢者を中心に聞き取り調査を始めた。活動を進める中で「自分の地域ではどう話すだろうか」という疑問がわき、周辺4地域に限って調べ始めた。

 昔は洗剤として使ったサイカチ。お年寄りに尋ねたとき、顔を見合わせて「サイカチって何だ」とひそひそ。実物を見せると「何だ、シェガヂのことか」。以来、共通語で名前を言うのをやめ「これを何と言うの」と逆に尋ねることにした。

 会話の中で子供から孫、ひ孫とそれぞれの呼び名を挙げた。5番目の「じんじりご」まで来たときに、90歳を超えるおばあさんから「その次は何と言うか知ってるか」と聞かれた。尋ねると「とびごって言う。とびごが出るとおしょしくて(恥ずかしくて)」と教えてくれた。

 身体の各部分の呼び名を図入りで解説している部分では、今はほとんど使われないものも。デイケアで「むすんでひらいて」の童謡を振り付きで歌う活動を行ったとき、藤沢さんが「その手をひっかめに」と言うと、参加者全員が黙って手をひざの裏へ。方言を知らない若い職員が驚いていたという。

 「スーツにハイヒールで『おばあちゃん、何か話して』ではだめ」と言う。かすりで作った上着にジーンズで、自分も方言で尋ねると、ぐんと距離が縮まる。「どこでお年寄りに会うかわからない」と、出掛けるときは常にデジタルカメラと録音機、年表などの七つ道具を欠かさない。

 市内の児童センターで子供たちと触れ合う活動も行っている藤沢さん。調査で得た高齢者の方言や話を子供たちに語り継ぐことで、失われていく記憶を次世代へつなげる役割を果たす。「その立場にいることがありがたい」と思っている。

 大野村の村誌は来年の3月に刊行予定。そこに掲載できなかった方言を集め、秋には今回と同じスタイルのものを発刊したいと思っている。

 B5判、36ページ。定価は千円。問い合わせは藤沢さん(電話番号は019−688−7238)まで。


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