2004年 11月 1日 (月)        

■  〈新札発行〉新渡戸の顔が消える 「腰引かずに顕彰を」

 11月からの新紙幣登場に伴い5千円札から新渡戸稲造の顔が消える。近年はハリウッド映画などを通じて「武士道」がクローズアップされ、本県の偉人への注目が高まってきていただけに、県民は寂しがっている。現在の紙幣が発行された1984年から20年間に新渡戸の業績が国民に広く知られるようになったことも事実。盛岡市内の関係者は樋口一葉に選手交代後も「太平洋の懸け橋」の精神を顕彰していきたいと願っている。

日本銀行から盛岡市に寄贈され、先人記念館に展示されている新渡戸の5千円札2号券
【写真】日本銀行から盛岡市に寄贈され、先人記念館に展示されている新渡戸の5千円札2号券

 盛岡市本宮の市先人記念館には、日本銀行から発行当時の故太田大三市長に寄贈された5千円札の2号券が展示されている。同館の岡聡学芸員は「昭和62年から展示しているが、こちらに来られて改めて2号券を見て、新渡戸について理解して帰っていく人がたくさんおられる」と話す。

 札の顔は国民の先人理解に大きく寄与した。2号券はガラスケースに収められ、今後も記念室の目玉のひとつとして展示される。

 紙幣が替わることについては「新渡戸への親しみが薄くなってしまうのではないかと心配する声がある。身近に感じることが少なくなってしまうかもしれない」と懸念するが、「この間に新渡戸を研究する人は大変増えた」と話し、今後の研究の進展に期待する。

 新渡戸基金の内川永一朗事務局長は、5千円札の新渡戸を彫った元大蔵省印刷局特別工芸官の笠野常雄さんが先日死去したことを悼んでいる。

 「新渡戸の太平洋の懸け橋の精神を5千円札に刻み込んだという人だった。5千円札が出たことによって新渡戸は国民の中に根付いた」「しかし本当に新渡戸の業績は大変なものだという認識が浸透していないのでは。政府や政治家に積極的に盛り上げる心が欲しい。バルト海のオーランド島の新渡戸裁定などを理解している人が少ない」と話し、真の理解はこれからと受け止める。

 「アメリカ人の研究者が、日本の政治家や経営者や学生がたくさんやってくるのに、今は誰ひとりとして『武士道』について論じる志も識見も無いと非常に厳しいことを言っている。『ラスト・サムライ』の映画なども突如として作られたのではないことが分かる」と話し、国内外の受け入れ方にギャップがあることを指摘する。

 地元の観光などに与える影響については「花巻の記念館は本格的だが、盛岡の先人記念館は腰を引かないでもっと新渡戸を」と話し、一層の顕彰を期待している。


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