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今年の10月4日夕方、安芸高田市美土里町の川角山神社摂社・生桑招魂社の本殿を、宮司が清掃のために開くと、ツキノワグマが侵入していた。その体長は1メートル程度である。いったいどこから、何のために侵入したのか。
クマが山に姿を消した後で調べてみると、社殿の床材を突き破った形跡がうかがわれる。
社殿の床下にはミツバチの巣が作られていたことから、クマはこの巣を求めて中に侵入したと推量される。地方では宮司が常駐していない兼務社が多く、いつの間にかミツバチや小鳥などが営巣することもある。社殿の床下に巣を作ったミツバチとは日本ミツバチのことである。
日本ミツバチには西洋ミツバチに見られない特色がいくつかある。フソ病など病気に対する抵抗力が強い。オオスズメバチの侵入にも抵抗し、集団で包み込むようにして蒸し殺すことがある。樹種などを選ばず、ミツを採取する。
ところで、ドイツの作家、ボンゼルスの児童向け小説に『蜜蜂マーヤの冒険』がある。1912年に発表されたこの物語の主人公はマーヤ(女性のミツバチ)である。そのあらましを掲げると、次の通りである。
マーヤは暗いミツバチの町でミツ運びなどをする生活をうとましく思う。美しい外の世界に逃げ出した彼女は、そこで数々の冒険を体験する。最後にクマバチに捕まった彼女は、彼らがミツバチの町を襲撃しようとしていることを知る。
牢(ろう)を脱出した彼女は、ミツバチの町の王にそのことを伝え、町を救う。
如上の物語に登場するクマバチは、ミツバチよりは大型であるが、性質はおとなしく、積極的に人間などを刺すことはない。
ミツバチにとっても人間にとっても、わが国で最も恐ろしい敵はオオスズメバチである。このオオスズメバチに襲われると、西洋ミツバチは懐滅的打撃を受けるが、日本ミツバチの場合、したたかに抵抗し、生き残る。
昆虫の生態をよく観察しているボンゼルスは、現実的でないオオスズメバチを配することがなかった。だからこそ、叙情的な自然描写が生き生きと文章表現されたのである。
さて、日本ミツバチの採取するミツは、西洋ミツバチの多収にひけをとる。けれども、西洋ミツバチより多いミツ源植物から集めてくる。日本ミツバチのミツは多彩多様であり、その味に独特のこくがある。その味の違いをツキノワグマはあたかも知っているかのごとく行動する。
沼宮内町の山頂にある某神社では、社殿の天井部分にニホンミツバチが営巣した。それをかぎつけたクマは、神社に上ると、屋根を破壊した。その穴から巣のミツをすくいあげては、遂に平らげていまった。
紫波町の山間部で日本ミツバチを箱に入れて飼っていた人がいる。ミツをしぼろうと思ったころ、クマに横どりされてしまった。
それを聞いて、クマは箱のフタを取ってはミツの量を確認していたと解説する人もいた。その味は濃い。
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