2004年 12月 06日 (月)        

■  〈美術〉「手筋がいい」と八百二が言った 藤村さんが米寿記念に個展

岩手山を描いた藤村さんの作品
【写真】岩手山を描いた藤村さんの作品

 盛岡市の藤村嘉右衛門さん(88)の初めての油彩画展が24日まで、同市中野1丁目の北日本銀行茶畑支店(菅原孝紀支店長)で開かれている。藤村さんの米寿と、同支店開店20周年を記念して開催。花や風景を描いた作品9点が展示されている。

 藤村さんは同銀行のOB。13歳で父親を亡くし、家族のために学校をやめて同銀行に就職。一家の大黒柱として3人の姉弟を学校に通わせた。22歳で従軍し中国へ。悲惨な戦争を体験し4年後、命からがら帰国して同行に復職した。「波瀾万丈の人生だった」と振り返る。

 絵画を始めたのは40歳のとき。かねてから親交のあった画家、橋本八百二さんの自宅を訪れると、ヤマメをモチーフに制作中。「もう少しで描き上がるから、焼いて一緒に食べよう」と誘われた。

 夕飯を食べながら、藤村さんはふと「今度はおれが岩手山の絵を描いて持って来てみるかな」と言ってみた。「それが命取りだった」と笑う。以来、会うたびに「いつ持って来るんだ」とせかされた。「何もかにもうるさい」と、油絵の具一式をそろえて岩手山を描いてみた。

 作品を見せると「手筋がいい」とほめられた。それから本気になって描き始めた。作品を持ち込んでは「ここはこうでねえ。こうした方がいいんでねえか」と細かくアドバイスを受けた。「八百二さんは弟子を取らない人だったから、絵を描いて見てもらったのはわたしぐらいだったんじゃないか」と振り返る。

 人の前に出るのが嫌い。これまで美術品のコレクションや自分の作品などを寺や公共施設に多く寄付したが「自分の名前は出さないでほしい」と依頼。ある寺の住職からの「名前を出さずに寄付をすると、子孫に徳が伝わる」という教えが心に染みているという。

 現在も途中まで描いて完成していない作品を約20点抱えるが「これまで全力を尽くして生きてきた。これを残して死んで悔しいというのはない」と言う。「絵は楽しみ。別に急ぐことはないから、ちんたらとやることにしている」と笑う。

 84歳のとき、自動車免許を返上した。40数年の運転歴で、犯したのは駐車違反の2回だけ。事故は1度も起こしたことがない。「あいさつや商売で頭を下げるのはいいが、おわびの頭は下げたくない。誇り高く生きたい」と思っている。


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