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紫波町の粗忽相兵衛はナマズ料理に目がなかったど。自ら釣り上げるばかりでなく、時にはひそかにカラカ毒を流してナマズをとっていたど。
ナマズ料理でおいしい店があると聞けば、日本全土どこへでも出かけて食わずにはいられなかったど。
相兵衛は茨城県鹿島市に鎮座する鹿島神宮参道でおいしいナマズ料理を食わせてくれる店があると聞かされたど。早速、店の「鈴章」に出かけたど。
てんぷらは淡泊な味の身がふわふわしていたし、かば焼きも大ぶりで食いごたえがあったど。このほか、薄造り、照煮、ナマズ汁、ナマズのゆずみそ、すし、御飯つきで5770円の料金だったど。
わたわたとナマズコースを平らげた相兵衛は、単品で照煮とてんぷらを追加注文したどえ。
これもでらりと平らげた相兵衛は、さらに空揚げとゆずみそあえも追加注文して腹におさめたど。
相兵衛の食いっぷりの良さに感心した店の主人が尋ねたど。
「おめぇさん、見事な食いっぷりだども、どちらからおいでになりあんした?」
「岩手県紫波町の産でがんす。この店に来るため、持ち山を売っ払いあんした」
「味はいかがでがんす?」
「臭味がなくて良がんす。地底にいる大ナマズの頭を押さえ込む要石のそばで食うというのも良がんす。それに店員さんのサービスもベストだったじぇ」
相兵衛が女性店員にウインクしたらば、商売上手の彼女もおおげさにウインクを返したど。彼女は客であれば誰彼問わず、精いっぱいサービスしていたずおな。
ほだども、独身で女性とつき合ったことのねぇ相兵衛は「俺に気がある」と思ったど。この女を妻にするためには、ええふりこかねぇばならねぇ。
そこで相兵衛は、たまたま新幹線の車中で耳にした話を、さも前から知っていたかのようにしゃべることにしたど。
「おめぇたち、ナマズが地震を起こす訳おべだますか?」
「いやあ、俺らは料理を作るだけで、何も知らながんす」
「陰陽五行の法則によるとなっす、ナマズの字のつくりの念は土気に属するのす。ほだから、ナマズは土気の象徴とされた訳でがんす」。彼は得意そうにお守りを振り回したど。
「いやあ、貴重な耳学問をさせていただきあんした。お礼にかば焼きをサービス致しあんす」
「マスター、それよりも、ここの店員さんをかかあにけねぇすか?」
「それは困りあんす」
相兵衛がしつこくせがむので、女性定員はできあいのウナギのかば焼きをレンジで温めて出したど。
たちまち平らげた相兵衛に、女性店員は「ウナギの味はどうでがんした?」と聞いたど。
どでした彼は早々に店を出たど。彼は虚空蔵さんの信徒だったど。
どっとはれぇ
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