2005年 1月 5日 (水)        

■  〈盛岡ことば入門〉225 黒澤勉 「初笑いに寄せて」

 一六二、脱線余話−初笑いに寄せて

 

 すんねん(新年)あげますて、おめでとござんす。こどすもみなさま、わらって、まめすくて(健康で)いーとすで(良い年で)ありやんすよーに。

 「笑う門に福来たる」づー(という)ことばも、ござんすように、わらってくらすのぁ、なんたって、いづばん(一番)でござんす。

 おらぁ、だいがぐのどぎ、すんりがぐのせんせぁ(心理学の先生が)、「人は悲しいから泣くのではない、泣くから悲しいのだ」って、そわってやんすた。わげぇどぎがら、あだまわりい(頭が悪い)、とぐに、きおぐりょぐわりい(記憶力の悪い)、「健忘症」って、やめぇさ(病に)かがってら、おらでがんすがら、ほがのごどぁ、なにしとつ、おべでねがんすども(覚えていませんが)、このこどばばりぁ(言葉だけは)、「ばがのしとつおぼえ」なんだべが、わすれられなくてあんすた。

 かんがえでみれば、おもしぇことばでござんす。「かなすいがらなぐんでね、なぐがら、なぐはんて(泣くから)かなすいんだ」て、そってるんでござんす(言っているのです)。もす、これほんとだどせば(本当だとすると)、ふぐぁ(福が)くるがら、わらうんでね。わらうがら、ふぐぁくるづー(という)ごどでがんす。「笑う門に福がくる」づー、ことわざ、じづは、そーゆーいみなんだづ。

 むがすぁ(昔は)しょうがづぁ(正月が)きて、あのえ、このえど(この家と)、かどづげ(門つけ)して、ありって(歩いて)、しと(人)わらわしぇであるったもんでがんす。「かど」づのぁ(門というのは)、「もん」のごど、「え(家)」「やすぎ(屋敷)」のごどでござんす。わらってるえさ、ふぐのかみぁくる(福の神が来る)んだがら、さあ、わらいあんすべえ(笑いましょう)づー、いみでがんす(意味です)。

 柳田国男せんせの「みんぞぐがぐ」によれば、(なんて、おらもがぐあるふりすて、おしょすごど)ぬっぽんの(日本の)みんすー(民衆)に「予祝」づーかんがえぁ、あるづでがんす(あるといいます)。「予祝」ってきげば、こめどくしぇ(難しい)かんずぁ、すあんすども、なに「まえいうぇ(前祝い)」のごどでござんす。

 すんねんのはずめに、あぎのほーさぐいのって、たうえおどりしたりするのぁ、この「まえいうぇ」でがんす。もりおがめいぶづの「さんさおどり」も、もどぁ、しょがつの、まえいうぇでがんすだども、いまぁ、すっかり、かんこうよで(観光用で)がんすなぁ。しょうがつで、さげっこ(酒)かっくらって(飲んで)、うだっこ、きいだり、おどりっこみだり、らぐごだの、まんじぇ(万才)きいだりすんのも(聞いたりするのも)、みんなこの「まえいうぇ」でがんす。テレビのおわらいも、すんねんにぁ、いーもんでがんす。

 すんねんのはずめ(初め)の、わらいぁ、はいくでも「はづわらい」って、でえずにすておりあんす。さびすーしと(寂しい人)、よのながさ、きまやげでらしと(腹を立てている人)、ふけーぎで(不景気で)、しょうがづらすーごどもできねでらしと(できないでいる人)、びょうきで、いでー(痛い)いでーって、やんでらしと(病んでいる人)…そんたなしとごそ、わらてくなんしぇ。

 ドイツのこどわざに「ユーモアとは、にもかかわらず、わらうことである」づーのぁ、あるづーでがんす。くるすーどぎに、わらう、それごそ、ユーモアづーごどでがんす。わらって、ふこーば、ふっとばすべー。キリストさまも、ちゃんと、かなすむしとぁしあわしぇだ、んだがら、あがるぐなれ、きぼー(希望)もでって、そってやんす。

 「おめさま、そんたなごどそっても、くるすーどぎ(苦しい時)、おもしぇぐねーどぎ、なしてわらえるもんだべすか」っておたづねでがんすか。そんでやんすな、むりすてわらって、ひぎつったよーな、つらすのも(顔をするのも)、おがしもんでがんすな。んでも、ものぁ、かんがえよーって、ごどもござんす。あんまり、くそまずめに、こちゃこちゃどかんがえねーで(こせこせと考えないで)、すこす、おっきぐかんげーだり、ゆめっこみだり、まっと、らぐでねーしとのごど、かんげーだりすたら、なんじょであんすべ…。なんて、ろくたま、くろーづーのすらね、おら(苦労というものを知らない自分が)、さがすふりすて、せっきょたれるのぁ、おしょすごどでござんすども…。

 ずぶんで、われぇ(笑いを)つぐりだすのも、ゆるぐねーづーしとぁ、やっぱりおもしぇテレビだの、えーが(映画)だの、みるのが、いどもいやんすよ(良いと思います)。おら、きょねんな、いづばんわらったのぁ「笑いの大学」づー(三谷幸喜脚本、役所広司・稲垣吾郎出演)えーがでがんす。役所さんもたいしたやくしゃでがんすなー、「やくしょこーず」でね「やくしゃじょんず」でがんすな。

 おなじやくしょさんでも「すつらぐえん(失楽園)」なんつー、くれぇ(暗い)Hだえーがみるより、こっちのほーぁ、スカーッとしてよっぽどけんこーてぎでがんす。わらったがどおもたればおごて、おごたがどおもったっきゃわらう。よぐまあ、あんたらふーに、わらたり、おごたりできるもんでがんすなー。このやくしょさんの、まねっこして、わらったら、なんじょでがんすべー…

 まだまだ、かきてぇごどぁ、ござんすども、おめーのきじぁ(記事が)ながすぎるって、すんせつなしとぁ(親切な人が)おしぇでけやんすた(教えてくれました)。きょのどごあ、このくれぇにすて、どっとはれぇ。(岩手医大教養部教授)


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