2005年 1月 5日 (水)        

■  〈盛岡の楽器職人を訪ねて〉2 松本伸さん(バイオリン)

 盛岡市本町通1丁目に弦楽器工房を構える松本伸さん(49)は、東北地方で4人しかいないという製作者の一人。国内はもちろん、世界にも例がないと自負している装飾楽器製作の第一人者でもある。昨年末には、ミケランジェロの絵柄をチェロの横板に描き込んだ新作を完成。「一つステップアップしたかな」という手応えを、今後の製作に生かそうと思っている。

 バイオリンとの出合いは北海道の大学で建築を勉強していたころ。アパートの隣の部屋に住んでいた学生が弾いていたバイオリンの音色に興味を持ち、その学生から習い始めた。

 3年生の夏休み、建築視察の目的で友人たちとヨーロッパを旅行。バイオリンのメッカといわれるイタリアでは一人で工房を巡り、職人の仕事を見て歩いた。「こういう仕事もあるんだな」と思った。

 卒業後は東京の工房に弟子入りをして、約6年間修業。1985年に戻り、翌年工房を開いた。

 装飾楽器は師匠に教わったわけではなく、まったくの独学で製作を開始。ストラディバリウスの装飾楽器などを参考にしながら、独自の装飾を生み出してきた。

 今回の新作では、ボディーの輪郭に沿って引かれるバフリングというラインを白蝶貝を使ったらでん細工で装飾。横板にはミケランジェロのシスティナ礼拝堂の天井画を基にした6つの絵柄を描き込んだ。

 絵の具はアクリルガッシュを使用。木の上は筆が滑らないため、絵柄は描きにくい。人の顔の部分は特に難しいため、なるべく目を伏せている表情を選んだ。最後に挑戦したのはみけんにしわが寄っている、とりわけ難しい表情の人物像「天体の創造(太陽と月の創造)」。微妙な曲線と影に苦労し、顔だけで5時間かかったという力作だ。

 11月に東京で開かれた弦楽器フェア(日本弦楽器製作者協会主催)で初めて発表。たちまち人だかりができるほどの人気を博し、手応えを感じた。

 ミケランジェロ、ラファエロらのルネサンス時代の絵が好き。芸術作品ではあるが、ものを細かく描き込むという描写力は当時、職人の技としての価値も認められていた。楽器を作る職人としての自分の気質に合うその仕事を、これからも製作の中に生かそうと思っている。

 工房(電話番号019−651−8862)は盛岡市の「小さな博物館」にも指定されている。場所は同市本町通1丁目16の1、カメラのキクヤ2階。


本ページ掲載内容の無断転載を禁じます
ホームページに関するお問い合わせ、取材に関する情報は
E-Mail:hensyuu@morioka-times.com
盛岡タイムス宛てにお願いします