2005年 1月 6日 (木)        

■  〈盛岡の楽器職人を訪ねて〉3 水原洋さん(クラシックギター)

製作中の水原洋さん
【写真】製作中の水原洋さん

 盛岡市の水原洋さん(45)は、同市上田堤2丁目で水原クラシックギター工房を開いている。長い年月を経過した楽器の修理を通して当時の職人の声に耳を澄ませ、データでは解析できない感覚を頼りに「絵を描くように」楽器を作る職人。「大きなエンジンの馬力に耐えられる、本体が軽くて繊細できびきびして、かつスピードが出るスポーツカータイプの楽器」を目指し、オリジナルギターの製作に励む。

 北海道で過ごした大学時代、初めてクラシックギターを習った。当然のように売られている値段の高いギターを見て、量産された商品が持つ違和感を感じた。「自分で納得のいく楽器を作りたい」と思った。

 木工の授業を取って、技術を習得。卒業後「チャレンジするなら今だ」とギター専門雑誌の広告を見て、個人製作者に片っ端から連絡して弟子入りを志願。名古屋市の作家が受け入れてくれた。

 修業先ではたくさんの修理を担当。同じような木の割れでも、製作途中の乾燥の仕方や接着技術など、それぞれの楽器によって原因が違う。1台1台に向き合って、壊れやすい部分を理解した。

 現在も修理の依頼を多く受け付けている。150年前のフランス製のギターは、表板が割れて陥没していた。元の表板の部分を残すために0・5ミリまで薄く削り、その裏に新たに木を張って完成させた。

 「せっかく長い間生き残ってきた楽器。自分たちの責任というだけじゃなく、次の世代へ残さなければという義務がある。次に修理する人が中をのぞいたときに恥ずかしくないようにしなければ」とその手に力を込めた。

 オリジナルギターは、弦の長さが63センチから66センチまでの4タイプを製作。たった1センチの違いでも、厳しく全体のサイズを変えるため、それぞれの木型を作っている。

 ギターのプロポーションは正面から見て横幅が一番狭い部分と広い部分、縦の長さの比が2対3対4の整数比になるという。「和音も弦の長さの整数比。振動をきれいに響かせるために、昔の人はいかに感覚的に鋭かったか」と実感。

 受け継がれてきた楽器の構造の中で「意味が分からないところは、自分がまだ勝手に動かしてはだめ」と思う。そういう部分は意味があって作られているはず。その意図をくんで、部品の長さや幅などは簡単には変えない。理屈が分かったときに初めて触ってもいいと思っている。

 先人の声に耳を澄ませながらも、鋭敏な感覚を駆使して「絵を描くようにギターを作りたい」と思っている。

 これまで国内にとどまらず、スイスとフランスからの注文も受けた。弾き心地の良さは口コミで確実に広がっている。知り合いの家具職人から「育った木と同じぐらい持たせなければ、森林サイクルがうまくいかない」と聞いた。「楽器も同じ。自分のギターは150年以上持つように作っている」と話していた。

 工房はもりおか小さな博物館にも指定されている。場所は同市上田堤2丁目1の21。問い合わせは同工房(電話番号は019−663−0986)まで。


本ページ掲載内容の無断転載を禁じます
ホームページに関するお問い合わせ、取材に関する情報は
E-Mail:hensyuu@morioka-times.com
盛岡タイムス宛てにお願いします