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里山歩きは、親しい友の家を訪ねる楽しみに似て、こころがうきうきしてくるから面白い。そこで会えるのは山仲間ばかりではない。小鳥や昆虫、時にはタヌキやカモシカだったりする。雲も風も千変万化して遊び相手になるから、わたしのうれしさの原点が、里山にはたくさん散らばっているのである。
どんな地域にも、住民が親しむ「お気に入りの裏山」があるものだ。「これからお隣さんへ…」という感覚で、時々そっとお邪魔したいと思う。
冬枯れの小春日和、鑪山を久しぶりに歩いた。「たたら」とは、足で踏んで空気を送る大きなフイゴのことで、古代以降、このたたらを用いて行う和鉄精錬法、その精錬場をも鑪と呼んだという。となれば、この辺りもその昔、鉄の精錬に沸いた喧騒(けんそう)の地であったのだろう。
盛岡市の南大橋から国道396号を1・3キロ南下、Y字路を左に300メートルほど進むと、大正13年、国指定天然記念物になったシダレカツラの大木がある。そのシダレカツラの横から、砂利の小道を行けば「蝶ケ森・たたら山コース」の案内板が目につく。この斜面は果樹園になっていて、5月は白い花、秋ならリンゴの甘い香りで満ちるはず。さぞやオシャレな風景にちがいない。四季のめぐりを想像しているうちに、ぽっかり三角の山があらわれた。それが鑪山である。
登山口は、果樹園の上、舗装した農道を右折して南に200メートル進み、左側に切り通しになった林道に入ってすぐの斜面。ここからいきなりの急坂、しばしササにしがみつき、はいつくばる感じだった。
急登といえば誰しも「疲れるーッ」と思うが、日ごろ縮んだアキレス腱(けん)に、一歩一歩ストレッチさせているようで、けっこうこれが気持ちいい。山道がしだいに平坦になると、山頂はもうすぐだ。
鑪山を訪れたら、まっ先に北上川を眺める…と、わたしは決めている。銀色の一本の川。今日も北上川は、北から南へ走る光のリボンのように輝いていた。
三等三角点と明治30年ころ祭られた小さな祠(ほこら)にタッチして、落ち葉のりょう線をさらに南東へ。ほどなく「殿ケ武士山299メートル」のピークに着く。ここへ、たたらの風を日々ききにくる人がおられたのだろうか。新山大権現の新しい祠がひっそり置かれていた。大岩を下れば、登山口から延びた林道に至る。
鑪山は、シダレカツラを基点にし、殿ケ武士山を経由すると2時間30分のハイキングを楽しめる。(盛岡市在住、版画家)
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