2005年 3月 6日 (日)        

■  〈美術〉磯崎新が仮想する都市 賢治青春館で企画展

     
  展示されているモンローチェア  
 
展示されているモンローチェア
 

 もりおか啄木・賢治青春館(盛岡市中ノ橋通1丁目)の第16回企画展「磯崎新版画展〜百二十の見えない都市」は27日まで、同館で開かれている。旧第九十銀行本館が国重文に指定されたのを記念し、建築分野からは初の企画となった。世界的な建築家磯崎新が生涯テーマとして制作進行中の連刊画文集「百二十の見えない都市」の初年度分の版画とエッセーをメーンに53点を展示。都市の中に構造物を生み出す中で、現代の建築家が持つ課題意識や葛藤が見え隠れする。

 磯崎は大分出身、東京在住。大分県立図書館や群馬県立近代美術館、つくばセンタービル、水戸芸術館、海外ではスペイン・バルセロナ市オリンピック・スポーツホールなどがよく知られている。

  「百二十の見えない都市」は、70歳を越えた磯崎が01年4月から制作、刊行している版画シリーズ。毎年12号ずつ、10年間発行される予定で、1編が2枚の版画と1点のエッセーからなる。今展では初年度の12編を展示紹介している。

  作品は「漏斗都市」「地中都市」「垂直都市」「方城都市」「浮揚都市」「冥界都市」「無停都市」「蝸牛都市」「蜃樓都市」「乱磁都市」「水辺都市」など。実在の都市、今は失われてしまった都市、空想の中の都市が表されている。

  「異物都市」は2色のリトグラフと黒単色のエッチングの2点からなる。リトグラフの中に表された都市の中に建つ直方体は、スタンリー・キューブリック監督の映画「2001年宇宙の旅」のモノリスを想像させる。エッセーはモノリスそのものへ言及し、「物場所の物体だ」という。

  「私はとある街角でモノリスをみかけた。公園のど真ん中につっ立っていた」「この街には、トルコ軍の大包囲網にさえ耐えた城壁があった。近代化にともなう都市の膨張がいともたやすく破壊する。軍事的手段より、政治的決定のほうが手ばやく事がすすむ」「機能や有用性を超えて凝固した観念。−モノリス−装飾を犯罪とみた建築家の住んだ都市へ闖(ちん)入したアドルフ・ロース的異物」。

  磯崎が「見えない都市」を思いついたのは近年のことではない。浮揚都市では「未来都市は廃墟である」と書き、方城都市では「都市とは他者でなければならない」と書くなど、形がありながら不変ではない都市を探す作業が、「見えない都市」シリーズなのかもしれない。

  このほか、磯崎デザインのモンローチェアとテーブル・いすの一式が展示。モンローチェアはマリリン・モンローと19世紀の英国人建築家マッキントッシュの意匠をコラージュし、二人に対するオマージュが込められているという。長い背もたれは、もたれる角度に対して曲線を描く。背中がフィットするような機能性を持ちながら、美しいフォルムを共生させている。

  ほかの版画では、「Folly」という木版画3点は茶室。ジョン・レノンに依頼され構想したが、暗殺により実現しなかった作品。還元シリーズは、磯崎が手がけた建築物の原型を版画として残したもの。建物が都市の中で機能するために装飾などが加えられる前段の姿が映し出されている。シルクスクリーン「MOCA 1」は代表作の一つ米国ロサンゼルス現代美術館を版画化した。入場無料。午前10時〜午後7時30分。8日は休館。


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