■ 〈阿部陽子の里山スケッチ〉7 朝島山(あさじまやま、607b)
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「朝はど〜こから来るかしら〜」「あ〜の空越えて、野を越えて〜」
朝島山は、懐かしい歌をスイングしているような一日の始まりの山である。
乙部三山の一つ、日いづる山として、古くから朝島山は太陽の道に関係していたとか。「岩手の山名ものがたり」(小島俊一著)に「シマ(島)は北上川河岸の地や一区画の意で、霧に立つ山は正に海の島に見えたか」とあった。
「そんな山があるの?」と、首をかしげる修治さんと志穂さん。車中、太陽神の話で盛り上がりながら、早春の大ケ生に向かった。
国道396号を南下。徳田橋の交差点を1キロすぎ、龍源寺の看板を左折し、乙部川沿いにしばらく東進する。加倉バス停の丁字路を江柄方面に登ると、2キロで朝島観光りんご園へ至る。そこから400メートルでスギの植林地に入るが、「近郊自然歩道」の標識と矢印に従えば、朝島山のピークまでの1キロを迷うことはない。
その標識のある344メートル地点の丁字路の林道脇に車を止めた。ここで「中央・鉱石跡コース」と「立岩コース」に分かれる。どちらを選んでも林道に戻られる仕組みだ。
手入れのいい立派なスギ林を見ていると、目がチカチカしてきた。
林を歩く馬の絵で仕掛けた「謎」を描いてみせたのはベルギーの画家・マグリット(1898〜1967)木・馬・木・馬・馬・馬、アラッ?こんがらがっちゃった。かくして超現実的なトリックにひっかかる。で、マグリットはうそぶく。
「どれが馬?どこが木?―嘘と実―現実とはそんなもんサッ」と。
こんな視覚遊びをしながら中央コースを登るのも悪くない。尾根に出たあたりで広葉樹林と松の巨木が交ざる急斜面になり、鉱石跡コースの二手に分かれるが、やがて合流する。北東に鬼ヶ瀬山、黒森山は南東にそびえて見えた。
50分で頂上に到着。早春といえども風は冷たい。横から小雪が吹きつける。体が冷えぬまにツェルトを張って湯を沸かす。薄いシートなのに中は暖かく、ゆっくり地図と方位のおさらいをする。
晴れれば、北西の岩手山から南昌山塊などの奥羽山脈が、そして北上高地は北東の兜明神から早池峰あたりまで眺められるはず。地図で確認した山々が、頭の中に面白いほど立ち上がってくるのだった。
矢巾町文化財調査委員の阿部さんの研究によると、志波城からみると冬至、徳丹城からみると夏至の太陽が朝島山から昇るのだという。それは「天道の暦」、自然の確信そのものにほかならなかった。
(盛岡市在住、版画家)
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