さて、単数形と複数形を間違えても言わんとすることはなんとか通じることが多いと言いました。
a(an)がつく時、-s,-esがつく時、theがつく時、何もつかない時などがありますが、これらは、第7回の「複数形の心」で述べたように、英語を母国語にしている人たちの外界認知の仕方が関係しています。
認識の仕方ですから、始末の悪いことに場面や状況によって微妙に変ることがあります。「微妙」な程度だからこそ単語と語順が適切であればなんとかコミュニケーションはできるというわけですが、ここでは-s,-esをつけるかつけないかで単語の意味が少し違ってしまう場合をとりあげてみます。
競馬場で馬の姿を眺めながら、「僕は馬が大好きなんだよなー」と言うときI like horses very much.が普通です。
もし、ここでI like horse verymuch.と言ったら「僕は馬肉が大好きなんだ」ということになります。どうしてか。
生きている馬はいわば輪郭が認識できる有形的な個体です。だから1匹ずつ数えることのできる対象です。一方、馬肉は量的な塊と見なし、切り方によって形も量も変わります。
肉をあえて数えるものとしてとらえる場合は、ご存知の通りa slice of(一切れの)とかtwo slices of(ふた切れの)とかのように、数を表わすわすことのできる語、つまり-sをつけることのできる語を「補助手段」として使ってまで数と量にこだわるのです。わたしたちからみると「ご苦労さん」と言いたくなりますね。(言語人文学会会長)
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