2005年 5月 5日 (木) 

       

■ 世界一の薄さを組み立てる 盛岡セイコー工業の桜田さんが黄綬褒章

     
  黄綬褒章を受章した桜田守さん。持っているのは厚さ1・98ミリのムーブメントの300倍模型  
  黄綬褒章を受章した桜田守さん。持っているのは厚さ1・98ミリのムーブメントの300倍模型  
  雫石町板橋の盛岡セイコー工業(西郷達治社長、従業員470人)「雫石高級時計工房」組立工房主任の桜田守さん(55)は高級腕時計の組み立て一筋40年。世界一の薄さ1・98ミリに約120の部品が凝縮された機械式腕時計。その薄型ムーブメント製造技能で業界の頂点に立つ。ミクロン単位に己の意匠を注ぎ、時計に永遠の命を吹き込む。今年度春の褒賞で黄綬褒章に選ばれた。

 桜田さんの舞台は、肉眼では確認することができない100分の1ミリの世界。始業1時間前に必ず出社。集中力を高め、匠(たくみ)の業(わざ)を発揮する。限られた時間で一定の精度に仕上げる緊張感が「楽しい」。

  厚さ1・98ミリのムーブメントから、ケーシング組み立てまで腕時計1個を1人で生産する。調整に狂いが生じないためだ。「くるま」の上下に100分の1〜3ミリの「あがき」を付ける。「あがき」で自分の作かが分かるという。ミクロの世界に意匠を凝らす。

  「誰でもできるわけじゃない」。顕微鏡や時計用ルーペ「きずみ」を使えば視力は問題ではない。高精度の技術で一人前と認められるセンスが不可欠だ。

  組み立て一筋だった桜田さんも常にふるいに掛けられてきた。「自分が一人前だと思ったのは10年前ぐらいから。客観的に認められたことも大きかった」。

  高級機械式時計は月産で約20個、年産300個しか作ることができない「一生もの」。自分の作った時計が修理のために戻ってくる。持ち主が時計をどう扱っているかや職業まで一目で分かるという。
  1965(昭和40)年、中学卒業と同時に親会社SII(セイコーインスツル、本社・千葉市)前身の第二精巧舎へ入社。組み立てから仕上げまで手作りで少量生産の高級腕時計を作り続けてきた。40年間で1万個に時を刻み付けた。

  一時クオーツ部門に在籍したが、90年代に時計の原点である機械式時計の価値が見直された。立ち上がったプロジェクトに参加。3人のうちの1人に最年少で抜てきされた。開発された極薄ムーブメント生産技術で業界第一人者になった。99年には国の「現代の名工」にも選ばれた。

  02年にSIIで国内唯一の腕時計、ムーブメント生産拠点になった盛岡セイコーへ出向。現在は実家の千葉市から単身赴任。クオーツ製造部門から雫石高級時計工房が昨年9月に独立。総員60人の指導的立場にいる。

  「メカ(機械式)時計を知らずしてクオーツは成立しえない。さまざまな調整個所が技術を発揮する場所で、上達は難しい。大先輩たちの業、理論、そういうことをマスターして初めて一人前になる。そこに面白さ、楽しさがある。今の若い人にそれをどう伝えるか。定年まであと5年。伝承が最終目標」。遺伝子を受け継ぐ人材を育てる。

  27日に東京で褒賞の伝達式がある。

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