前回の馬と馬肉の話の続きです。そば屋さんに行くと「かしわそば」というのがあります。「かしわ」は当て字で黄鶏と書き、上等の鶏肉です。
丼の中に入っている3切れほどの鶏肉を指して、What are they?と聞かれてThree chickensと答えたら、生きたニワトリ3羽が丼の中に入っていることになります。
でも、英語のネーティブはこの状況から考えてそんなはずはないから、Three slices of chickenのことだと判断するでしょう。場面や文脈、それに身振りや表情などはコミュニケーションを支えている重要な要素なのですから、英会話では言い間違いを恐れずに知っている単語を声に出しましょう。
人間には相手の言い間違いを訂正して聴き取る能力があります。これは逸脱文解釈と言われる言語処理です。
さて、羽毛に覆われ、とさかがあり、脚がついている生きた有形的な個体としてのニワトリは数える対象としてとらえ、逆に、もはやその原型をとどめず、食材となってしまった肉片としての鶏の方はある重さをもった分量としてしかとらえていないのです。だから、
鶏肉に〜sをつけることには違和感を感じるのでしょう。
わたしたち日本人にはそんな言語感覚はありません。でも、チッキンという単語を知っていたら気にしないで英語で言いましょう。わたしはキッチンと言い間違えたことがあります。これだと台所ですよね。かしわそばのなかに台所が入っていたら大変だ。(言語文化学会会長)
|