2005年 5月 8日 (日) 

       

■ 〈雑誌創刊号の話〉201 成ケ澤栄治 別冊・幻影城

 

昭和50年は、『犬神家の一族』『八つ墓村』など横溝正史がブームでした。文庫本と映画を抱き合わせて、「読んでから観るか、観てから読むか」と宣伝する例の角川商法が、火を付けたのです。

  映画の松竹も『八つ墓村』で「たたりじゃあ」の宣伝コピーをはやらせ、これに追随するのでした。

  絃映社の探偵小説雑誌『幻影城』の姉妹誌として、『別冊・幻影城』(A5判・356ページ)が創刊されたのも、この年の9月でした。

  創刊のことばは、「…(略)大正12年、江戸川乱歩の登場以後、わが国の創作探偵小説は50年以上の歴史を数えるに至った。…(略)新しい探偵小説の誕生のため、戦前戦後の名作を厳選して、作家別に収録すると共に、埋もれた作品を再評価し、読者に提供することを目的として《別冊・幻影城》を新たに創刊した」と、その意図を述べるのです。

  創刊特集も、このブームの張本人「横溝正史」ですが、2年前の「高松塚古墳」発掘を機に人々の関心は「埋もれ、失われつつあるもの」へと向けられるのでした。横溝ブームもその一環かと思われます。

  ご存じ、金田一耕助がデビューしたのは、昭和21年4月号の『宝石』に発表された『本陣殺人事件』でした。郷土が誇る、金田一京助先生とは一字違いであること、しかも19歳で東北の旧制中学校を出たという経歴、さらに素朴な風さいが印象的で、わたしは親愛の念をもって愛読したものです。

  横溝は、探偵小説の発表が難しかった戦時中、捕物帳時代小説で息をつないでいました。その代表作『人形佐七捕物帳』は、江戸風物を背景にした謎解きの面白さと、女にもてる捕物名人と脇役のコンビの活躍が読者をとらえたのです。

  『別冊・幻影城』創刊号は、グラビアに「本格派の巨匠・横溝正史」と8ページに渡って、幼少から現在までを紹介します。作品編には『本陣殺人事件』18編と『獄門島』25編をいっきに載せます。

  評論に、江戸川乱歩「本陣殺人事件を読む」、高木彬光「獄門島について」、西田政治「神戸時代の横溝君と私」、横溝亮一「畔道の鬼」が寄せられます。

  戦局下にあって、ディクソン・カーの作品を読み、緻密な論理構成と巧みな小道具の使い方を学び、新境地を開いた横溝作品は無類の持ち味を備えています。


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