2005年 5月 14日 (土) 

       

■ 〈里山スケッチ〉9 阿部陽子 七時雨山(ななしぐれやま、1030m)

     
  七時雨山  
     
  5月は岩手にとって待ちどおしいフローラの季節。盛岡の北約50キロ、西根町と安代町の境目に双耳峰、七時雨山がある。「7」は西洋占いではラッキーセブンで、同時に「たくさん」という意味もある。

  もともと「時雨」は10月の季語。この地域では1日のうちに降ったり止んだり、何度もしぐれるから七時雨山と名がついたのだという。

  「ぜひ見に来てください。今年は雪が多かったから2週目あたりかな」

  七時雨山荘オーナーの立花さんから、牧野にベニヤマザクラの巨木が1本あるという話を聞いていた。今年こそは逃すまい。すでに里の桜が過ぎた5月の中ごろのこと、まだ間にあう。友達と誘いあわせ、お花見登山とシャレこんだ。
 
  七時雨山へは、盛岡から国道282号を北上し、田代平高原を目指すことになる。平舘で県道17号に進入、そこから寺田の集落へぬける直線ルートが最も近い。もしくは東北自動車道、安代インターから向かえばさらに早い。田代平は標高600メートル・北緯40度。さわやかな風が吹きぬける別天地、いきなりドリームランドにすべり込む感覚だ。

  1千メートル前後のピークがゴジラの背のようにうねうね連なり、緑の草原と赤い屋根の山荘をすっぽり囲んでいる。初めて登る人は駐車のお願いがてら、登山口へのアプローチを尋ねたい。もしかしてリリーがそこまでお供する…かな?

  山荘から南東方面へしばし農道を歩く。足もとに咲く山野草が見事だ。カタクリ、ニリンソウ、エンゴサク、キケマン…○○スミレ、すぐ覚えられそうもないので図鑑をお忘れなく。ここは右手前方への視線もはずせない。お目当てのベニヤマザクラが、百万枚の花びらを春風に揺らしているのだった。

  開けた牛止めの柵を閉め、牧草地の小道を進むと登山口の三合目に着く。四・五・六合目は急な登り。やがて明るいササ道に変わり、1等三角点のある北峰に迫る。山荘から1時間30分で頂上に立った。

  稲庭岳、折爪岳、北上山系の山々、姫神山、岩手山や八幡平の山々が、生暖かい空にボッボッボッと、霞んで見えた。権現山と呼ばれる南峰までは300メートル、往復30分たらずなので行ってみよう。

  この南峰を下れば車之走峠(くるまのはしりとうげ)に至る。近世以前、七時雨山は流霞山(ながれかすみやま)と古称。また、秋田県の鹿角と交易した旧街道の面影を「賽(さい)の神群」「マンダ並木」「助け小屋跡」「流霞山道地」のくいで伝えている。

  リリーとは、めっぽう賢いゴールデンレトリバーのメス犬、女性好き。なぜかって?
  (版画家、盛岡市在住)

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