藪すべてたそがるゝころやうやくに
み山の谷にたどり入りぬる。
〔現代語訳〕藪も全部夕闇に包まれるころ、ようやく御山の谷にたどり入ったのです。
〔評釈〕「明治四十四年一月より」〔「歌稿B」〕九十五首の四十七首目。初句には「ものみなが」の異稿も。「たそがる」は、「たそがれ(黄昏)」で「誰そ+彼」が原義であるあることは繰り返すまでもあるまい。「み山」の「み」は、この「山」への話者の敬意を示している。下部余白に「岩手山麓の谷の炭焼小屋」などの文語詩「製炭小屋」のメモと思われるものがあるから、「岩手山」へと特定することも可能。〔「製炭小屋」の内容は、そのまま抽出歌に通じるようなものではない。〕「歌稿B」の配列からすれば、この作品を中にした三首は、「岩手山」を舞台にした三首だとするのが一般的解釈か。そうすると「やうやくに」の説明が必至となるのだが、そこに立ち入らぬのが賢治的方法でもある。 (岩手大学教授)
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