前回からa,anやtheの話が加わって名詞がにぎやかになってきました。ここで、芭蕉の有名な俳句「古池や 蛙(かわず)とびこむ 水の音」を英語にする場合のことを考えてみましょう。
ここでは、まず蛙をどうするかに焦点を当ててみます。英語を母国語にしている人は迷います。何を迷うか。この蛙は次のどれがふさわしいか。
@frogAa frogBfrogsCthe frogDthe frogsのうち最適なのはどれか?
@蛙の肉の意味。Aある1匹の蛙。Bほかの動物と区別した蛙一般ですから、ヒキガエル、雨蛙、アカガエル、トノサマガエルなどを含みます。C動物の種としての蛙の代表としてとりあげられた特定の一匹の蛙、またはその場で周知の例の一匹の蛙。Dおなじみのあの特定の数匹の蛙たち、といった意味があります。
さて、@は論外。まさか食用蛙ではありません。Bは蛙という類のことだから、ここには合わない。Cは、古池に住み着いて、いつも現れる例のあの蛙と考えればよさそうだが、ふらりとどこからともなく現れた蛙ととればふさわしくない。Dは、古池に特定の蛙たちが何匹もとびこんだことになり、古池が騒々しいからだめ。
これらのどれをとるかは、日本の文化的伝統の中に流れる「わび」とか「さび」を深く研究した外国人でないとできないでしょう。
ここに、日本人にも広く受け入れられている
R. H..Blyth: HAIKU, The Hokuseido Press, vol.2, 1983の英訳を挙げておきます。
The old pond:
A frog jumps in,-----
The sound of the water.
ここで、蛙の英訳はAが選ばれているのが分かります。どこからともなく墨絵のなかから出てきたような1匹の蛙にはこれが一番だと思うのですが、いかがでしょうか。
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