「どうぞ」と呼ばれて、たばこの煙立ち込める階段を通り4階へ。総務課長が「では、行きます」、「はい?」、「18対3で同意されました」、「はあ」、「どうぞ」って、打ち合わせでは課長が先だったのに。
議場入り口で一礼して階段を降りました。議会を通った場合には村長の横で挨拶をするようにと、言われていました。前のほうに村長らしい頭が見えたので、数歩進み、よく分からないけど、もう一度礼をして顔を上げると、遠くにカメラを持った人たちがいるのが見えてきました。何でこんなに大騒ぎになるのかしらと、いぶかしく思いながら、考えてきた挨拶を言いました。
村長室に戻ると、各社合同のインタビューが待っていました。「女性の視点で、どのような村政運営をお考えですか」。
表現は違うものの、どの記者も「女性の視点」というのを記事にしたいようでした。これにはびっくり。助役の仕事に男も女もないでしょうに。女性の視点で仕事をするなんて発想は全くなかったのでそう答えました。そうか、この大騒ぎは、私が女性だからなんだと、そのとき初めて気づきました。
マスコミ関係者って時代の先端の感覚を持っているべきものでしょう。しかも、記者は皆私より大分若い人たちに見えました。それなのに「女性の」助役でニュースにするって、ちょっと古いって言うか、いかがなものでしょう。
とにもかくにも、こうして私の就任は決定したのです。後になっていろいろな人から言われました。よく引き受けましたねって。それは賞賛とか感心の声ではなく、どちらかというとびっくり、あるいはむしろあきれたというような響きが多かったと思います。素人が無謀なことを、一体やれると思っているの?
私自身はそんなに心配はしていませんでした。人間がやることにそんなに大きな違いは無いと思うし、村のために私がやれることを一生懸命やるだけ。素人でも立派に市長をやってる人もいるしね。(滝沢村前助役) |