2005年 6月 14日 (月) 

       

■ 〈英語ってどうなってるの?〉22 成田浩 ピアノを弾く

 前回の「男は…」の話で、「もうaやtheのことはごめんだ、頭が変になる」と思っておられる方も多いと思います。まったくその通りです。

  でも、これまでの話で、英語を母国語にしいる人たちは、ものごとを見るのに、個々の個体とみるか、回数が予測される出来事とみるか、量的全体とみるか、特定的とみるか、不特定的と見るかなど、複合的な視点をとることが分かってきました。

  個々としてとらえられる名詞を「数えられる名詞」、量的・質的にとらえられる名詞を「数えられない名詞」と言います。この区別に関して一般の英語辞書ではおおまかな記載はしてありますが、場面による変化までは無理です。英和辞典はあくまで「最大公約数」の記載なので参考程度と考えた方がよいでしょう。

  さて、数えられる名詞pianoを含む次の例を見てみましょう。「わたしには自分の部屋にピアノがありますが、防音してないので学校の音楽室で弾くのです」を英語にすると、
  I have a piano in my room, but I play the piano in the music room at school because my room is not 

soundproof.となります。

  この文で、I have a pianoではaで、後半のI play the pianoではtheです。なぜでしょう?

  このtheは話し手と聞き手の間で了解済みの、前に出ているa pianoを指して使われたものではないはずです。だって、自宅のピアノと学校のピアノは別物なのですからね。では何でtheなのでしょう。
  答えは、前半のa pianoはピアノを単に1個の「もの」としてとらえているのに対して、後のほうでは、弾いているのはfluteでもなくviolinでもなくguitarもなくて、pianoですよと、楽器の種類を限定しているのです。

  定冠詞の「定」にはさまざまのレベルの限定が含まれていることが分かります。中学や高校の英語の授業では、楽器の前にはtheをつけると習いました。これはそんなわけだったのです。

  それなのに、スポーツにはplay tennisのようにtheがつきません。スポーツではその種類を限定しないのだそうです。ここでも、英語は論理的だとは言えないことが分かります。  (言語人文学会会長)

 

 


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