2005年 7月 9日 (土) 

       

■ 〈英語ってどうなってんの?〉29 成田浩 こまかいことはもうたくさん

 いままでお話してきたように、英語で名詞を使わなければならないときは、必ずaかtheか-s,-esをつけるか、これらのどれもつけない形のいずれかを選ばなければならないというわけです。

  訳しているときは、それぞれの意味を日本語にしなくても済むとしても、こちらから英語を発するときは、わたしなどいつもおろおろしています。

  次の対話の中で、ある話し手が“I have a maple tree in our garden”と言ったら聞き手である相手は“I ‘d also like to have a maple tree, but our garden is too small.”と言いました。

  この場合どちらもa mapleですが、話し手が言っているカエデはどんなカエデか、自分ではその大きさも枝ぶりも知っていますから特定のカエデです。

  それに対して相手が「わたしもカエデが欲しい」と思っているカエデはどんなカエデになるのか、まだ手にいれていませんから不特定のカエデです。

  それなのに、どちらのカエデもa mapleです。高校でaを不定冠詞と習ったのに、特定の意味もあるのかと思うでしょう。そうです。不定冠詞という名称が誤解を招くことがあるのです。この場合、相手の人はoneという語を使えるのですが、それは代名詞についての話で触れます。

  こういうことになってくると、英語ネーティブでないと分からないことが多いのです。日本英語学会とか日本言語学会の投稿規程の中にさえ、英文で論文を投稿する場合はネーティブのチェックを受けることが明示されています。

  英語の専門家なのに情けないと言えばそれまでですが、逆に外国人の書いた日本語がどことなく変なことがあるのと同じことです。外国人の日本語を見てあげた経験のある人も多いことでしょう。公的な場に出す文はどうしてもそうなります。

  でも、会話は別です。言語音の場合は音波として空気中に消えてしまいますから、責任ある発言でもなければ、そこまでする必要はないのです。あまりこまかいことを気にしていたら英語は使えません。英語の練習が足りないわたし自身の実感です。  (言語人文学会会長)

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