■ 〈美術〉賢治の風と光と「いのち」 絵本作家の伊勢英子さんが原画を展示
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「永遠のそこ」の前で解説する伊勢英子さん |
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絵本作家伊勢英子さんの絵本原画展「宮沢賢治の風と光と『いのち』」が7日、盛岡市加賀野字才の神の岩山漆芸美術館で始まった。岩手では宮沢賢治童話の絵本などで知られる伊勢さん。約210点の原画やタブローなどが展示されている。「賢治は生と死の間に何かがあるということを考えていた」と受け止め、自身も考えているという伊勢さん。賢治作品以外を合わせ絵全編を通じて命を問いかけている。8月23日まで。
美術館に入って最初に目にするのはアクリル画の「永遠のそこ」。画面の上の方にはヒマワリの群落、下の方には深い青の夜空を飛ぶヨダカが描かれている。ゴッホの「ひまわり」と賢治の「よだかの星」が合体した作品で、二人へのオマージュという。
伊勢さんが「よだかの星」の絵本を書いたのは1986年。その後もそれでよかったのかと自問していた。そんな伊勢さんに「ゴッホが幾つかの道を用意してきた」という。この10年ほど、岩手とゴッホゆかりのオランダやフランス、ベルギーなどを行き来するような生活をし、執筆した「ふたりのゴッホ」を発刊したばかり。賢治とゴッホはよく似ていると話す。
ヨーロッパで見たヒマワリの群落からよだかが向かっていった世界を見たという伊勢さん。絵では歌をうたっているヒマワリを目指してよだかが飛んでいく。
よだかが行ったのは銀河系の世界ではなく、音楽の聞こえてくる方にある「永遠のそこ」という別な世界だったと解釈している。悲しみをたたえながら透明感のある美しいよだかの世界とヒマワリの陽(よう)を感じさせる世界が、境界を消していくようだ。
賢治童話は「風の又三郎」など手がけた4作とも原画を見ることができる。
「水仙月の四日」は雪景色の中で繰り広げられる話。伊勢さんは物語に出てくる「雪の表情を全部描く」ことをテーマに描いた。絵によって紙や絵の具を変え、特に和紙を何枚も使い分け、劇的に変化する雪の表情を追いかけている。
絵本で見るタッチの変化は、原画を見ることでさらに豊かな表情で迫ってくる。物語最後の絵は雪山。その姿は手前が鞍掛山、向こうが岩手山をモチーフにしていると、県人には分かる。
伊勢さんは「賢治は舞台がどこかと書いていないが、鞍掛山だと思う」と推測する。
賢治童話以外でも見どころがたくさん。阪神・淡路大震災復興支援の98年に行われた1千人のチェロコンサートに参加し、生まれた自作の物語と絵の「1000の風 1000のチェロ」は、鉛筆と水彩を使い画面の中に風を起こしている。
今展の企画に携わったノンフィクション作家柳田邦男さんは「一枚一枚に絵描きが何を込めて描いているか、それぞれに見てほしい」と話し、絵本作家が家族や社会などとのかかわりから作品を生み出している背景を解説。「じっくり見た経験が、あしたからの心の持ち方を変えてしまうかもしれない」と話している。
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