■ 〈高校野球〉7割打者の夏終わる 盛岡中央宇部捕手
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甲子園出場の目標は寸前で絶たれたが、小さいころからの夢に向かって進む宇部銀次。第3打席、初球を中前に運ぶ |
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試合後のあいさつを終えて一塁側に帰ってきた盛岡中央ナイン。多くがベンチにも入らず泣き崩れる中、捕手宇部銀次(3年)は後ろのベンチに腰掛け、うつむくでもなくグラウンドへ顔を向けていた。
夏の大会全6試合にフル出場。1番打者として24打数18安打8打点1本塁打。7割5分という高打率は、非凡さを示すには十分すぎる成績。しかし甲子園へあと1勝のところで終わった。「甲子園に行きたかった。絶対に負けないぞとみんなできのうから言っていたのに」。チームの目標が達成できなかったのが悔しい。
昨秋、新チームは最上級生になる宇部が中心のチームとなった。佐々木大介監督は「最近、一人の選手が引っ張っていくチームはなかったのではないか」と、宇部の力を認めていた。捕手でパンチ力のある宇部を中軸ではなく1番に置いた。宇部のリードオフマンとしてのプレーがナインの力を引き出してくれると考えたからだ。
「銀次にはお前が打たないと負ける」とあえて強く言ってきた佐々木監督。「責任を感じているかもしれない」と気遣ったが、宇部は「監督に言われてもプレッシャーを受けることなく自分のプレーをした」と言う。
今年になって打者としての非凡なセンスに一層磨きが掛かると同時に、捕手としての成長が著しかった。リードはもちろん、もともと強かった肩にスローイングの速さとコントロールの確実性が増した。決勝でも5回、相手の二盗を見事な送球で刺した。
この日、宇部は初打席の初球をたたいて右前に運び、自ら先制のホームを踏む。理想的な攻撃から始まった。7回までの4打席を3安打1四球とすべて出塁していた。しかし、走者を置いて巡ってきたのは第2打席だけ。2死一、三塁から敬遠ぎみの四球となり、打点を挙げることができなかった。
この巡り合わせの中で盛岡中央は中盤に追加点を挙げられず8回に逆転を許す。特に「自分のミスで点を取られてしまった」と4点目の捕逸を悔やんだ。「自分のせいで負けるんだろうなとはっきり思った。でも次の回に自分で返そう」と誓った。
9回の攻撃、1死走者なしで回ってきた。自分が出るしかなかった。「絶対に塁に出てやる」。中に入ってきたカーブをこの日一番のスイングが弾き返した打球は右中間を破って三塁打。逆転への望みをたぐり寄せた。三塁上で「どんなのでもいいからヒットを打ってくれと念じた。桑田は自分が信頼している選手なので」。桑田は粘って二ゴロ。内野の守備を見て本塁に駆け込んだ。しかし、反撃もそこまでだった。
閉会式後に取材されているうちに、堪えきれないものがこみ上げてきた。「面白い仲間、優しい仲間、ずっと支えてもらった人のことを思って…」。
柔らかでしなやかな体遣いとバネ。プロ野球のスカウトも注目している。佐々木監督もほれぼれする。「小さいころからの夢なのでほかの道に保険をかけたくないみたいだ」と話す。プロへの強い希望をかなえさせたい。それだけに「甲子園でレベルの高い投手と対戦させたい」と思っていた。
宇部も甲子園に出てプロへアピールしたかった。甲子園という高校野球での目標はかなわなかったが「プロ野球選手になるのは小さいころからの夢だった。夢はあきらめない。プロを目指してこれからも頑張っていきたい」。
己に負けるな!。汗のしみ込んだ試合用帽子のひさしの裏に太い字で書かれている。対戦するチームがなくなったこの先こそ、自分との戦いが待っている。(井上忠晴記者)
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