2005年 8月 10日 (水) 

       

■ 〈賢治の歌〉127 望月善次 鳥さえもいまは鳴かねば

 鳥さへも
  いまは啼かねば
  ちばしれる
  かの一つ目はそらを去りしか
 
  〔現代語訳〕鳥でさえも、今はなかないので、血走っているあの「一つ目」も空を去ったのでしょうか。

  〔評釈〕「歌稿B」の「大正三年四月」一四八首中の二十首目で「96」歌。「一つ目」は、「明治四十四年一月より」の「68/69」歌などに、「黄金の一つ目」、「黄金の一つめ」などとあったから、「金星」のことだとしてよいだろう。「68/69」歌においては、「宵の明星」としての「黄金の一つ目」であったものが、ここでは「明けの明星」として、「ちばしれる/かの一つ目」となっているのである。この一連の数首は、ほぼ時間の推移に従った配列になっているから、連作として読む場合においては、話者が真夜中から明け方までず〜と眠られなかったことを示唆する形ともなっている。眠られぬ苦しみを、「ねむられずねむられず」(89歌)とした直接的描写としているものもあるが、多くは、時間的経過の中でさり気なく置いているのは、なかなかの構成力を示している。
(岩手大学教授)

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