2005年 8月 15日 (月) 

       

■ 〈賢治の歌〉132 望月善次 悲しみよわが小さき詩に

 かなしみよわが小さき詩にうつり行
  けなにか心に力おぼゆる
 
  〔現代語訳〕悲しみよ、わたしのこの小さな詩に移り行けよ。(そう思うと)何か心に力を自覚するのです。

  〔評釈〕「歌稿A」の「大正三年四月」百五十二首中の二十八首目で「107」歌。「かなしみよ」の「よ」は「間投助詞」で、「呼びかけ」の用法。初句に、「よ」を用いるものには、「さそり座よ/むかしはさこそいのりしが/ふたゝびここにきらめかんとは」(267歌)、「東京よ/これは九月の青りんご/かなしと見つゝ/汽車にのぼれり。」(349歌)などがある。「歌稿B」においては、いずれも初句改行にしているから、抽出歌も、「歌稿B」に残ったなら、おそらくは初句改行になったと思われる。「かなしみ」の具体は、明示されていないが、「力おぼゆる」の決意も、「うつり行け」宣言によって生まれたか、既に作品外にその契機があったかは、作歌の実際としては、微妙なところ。
  (岩手大学教授)

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