教室の窓からは見渡すかぎり田んぼ、遠くに農家が点々と見える。そこは1学年1クラスの小さな中学校でした。生徒は36人ほど。清八はきょうも鼻をたらしているだろうか。おひがん(というあだ名の生徒)はニコニコ顔してるかな。清子の目はきょうも丸いかな。
さて、きょうの授業はあの動詞につく〜sがでてくるぞ。物事がたくさんあるときにつく複数の〜sのほうもまだ十分ではないが、きょうは動詞につく〜sがでてくる。
そこで、まず清八に教壇に上がってもらい、そこを歩かせながら、「わたしは歩く」と日本語で言わせた。次に、わたしも歩いてみせて、わたしを指して「おまえは歩く」と言わせた。次に清子を教壇から少し離れたとろを歩かせた。そして、清子の行動を皆に言わせました。
すると、生徒たちは清子の行動を指して「清子は歩く」と言いました。そこで、わたしはすかさず「清子は歩くス」と「〜ス」をつけました。この変な日本語に生徒は一斉に笑いました。「なして、スなんてつけるの?」わたしは「あのナ、自分のごどでもなぐ、相手のごとでもない誰か一人の動作を言うときは、スとかズをつける言葉なんだよ、英語は」と言いました。ここまでは、すべて日本語です。
それから、「歩く」はwalkと言うのだと教え、子供たちに似たような場面を作って I walk か You walk とか
Kiyoko walksとか、ワイワイやらせました。
ところが、その時、教室の窓の外にベゴ(牛)が1頭現れたのです。チャンス!「ほら、ベゴが1頭歩くって英語で言ってみて」と生徒たちにうながしました。生徒たちはA bego walk.と言ったのです。ガーン!生徒は〜sがつくのは人の動作のときだけだと思ったのです。続く…。
(言語人文学会会長)
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