2005年 9月 12日 (月) 

       

■ 〈賢治の歌〉160 望月善次 カラスにはよもあらざらん

 からすにはよもあらざらんその鳥の
  その黒鳥の
  羽音ぞ強き
 
  〔現代語訳〕(その黒い鳥は)間違っても烏(カラス)ではないでしょう。その黒い鳥の羽音が、本当に強いのです。
  〔評釈〕「歌稿B」の「大正三年四月」百四十八首中の四十九首目で「141」歌。「歌稿A」は、「その鳥は烏にはあらずその黒鳥の羽音がつよく胸にひゞくぞ」であるが、「歌稿B」には、「その鳥は/からすにはあらず/その黒鳥の/羽音がつよく胸にひゞくぞ。」を初め「からすには/よ〔も〕あらざらん/その鳥の/その黒鳥の/水搏てる音」〔141、142a〕や「雨の雲/にはかに明し/その鳥の/その黒鳥の/水うてる音」〔141、142b〕など、書き込み多数。特に、「雨の雲(141、142b)」歌など、抽出歌との対比も含め、一首の範囲が論点となるところ。多行書きの点では、最初の行の「からすにはよもあらざらんその鳥の」が、「からすにはよもあらざらん」で改行しなかったところにも注目した。
(岩手大学教授)

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