前回の、小さな中学校でのわたしの授業の続きです。さて、ベゴだって1頭が歩くのであればA bego walks.と、対象を動物にまで広げます。ベゴのことを英語でa bull とかa cowとか言わせようとした矢先、ベゴがぞろぞろと2頭現れて、計3頭になりました。再びチャンス到来。牛はのろいのでしばらくは教材です。わたしは「ほらほら、ベゴ3頭きたよ、さあ、3頭のべごが歩くって英語で言って!」と言いました。
反応はThree begos walks.ときたのです。「ウーン、複数のベゴズと3人称単数の歩くスは同じ〜sだから混同しているのです。でもまだ、「3人称で現在でも主語が複数の場合は…」などという文法用語は中学一年の初心者には使えません。文法用語だけを知っていて英語そのものはどこかに行ってしまうからです。文法倒れになっては大変です。ここはぐっと我慢のしどころです。
その点、昔の旧制中学の先生は「偉かったなー」。むしろ威張って文法用語をふりまわして生徒から畏敬(いけい)された。そんなこと思い出してもしようがない。どうやってこれを理解させたらいいのか。
英語の仕組みの中で、現在ある動作や状態を表現するとき、それにかかわっている人が自分か他人かとか、人、物体、現象などが単数か複数かといった「柱」は多くの使用場面を通じて感得するまで根気よく繰り返すしかないのです。
この日の授業は欲張ったようです。「あすはまたkiyoko walks. やSeihachi runs.やA cow walks. やA bus runs.などの練習をしよう」と思いました。
He,She,Itなどを主語にするとそれだけを3人称だと思ってしまうし、彼や彼女という日本語は英語とかなりズレがあり、メスのライオンのことを言うときSheという英語に違和感を感じなくなるようにしながら、3人称単数現在などという概念に近づきたい。道のりはかなり険しい。
中学校、高校、大学、大学院、放送大学(中高年の社会人の方々)の職場体験の中で一番難しかったのは中学校、とくに1年生でした。その時の生徒がよく夢に出てくるのです。
(言語人文学会会長)
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