■ グローバル化の中で求められるのは教育への投資 谷口県立大学学長が講演
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県立大学と同大盛岡短期大学部の谷口誠学長
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県立大学と同大盛岡短期大学部の谷口誠学長の講演会「グローバル化時代と日本の対応〜明るい未来に向けて」が7日、盛岡市内のホテルで開かれた。同大盛岡短期大学部同窓会の成美会が主催。約150人が会場を訪れ、講演に聞き入った。
谷口学長は1959年に外務省に入省。83年から86年まで、パプア・ニューギニア駐箚(ちゅうさつ)特命全権大使、86年から89年まで、在ニューヨーク日本政府国連代表部特命全権大使などを歴任。90年から96年まで、OECD(経済協力開発機構)事務次長。97年、同事務総長特別顧問など要職に就いてきた。
国連での仕事を通して「日本は金を出すだけではなく、人をどんどん出すことが貢献になる」と常に意見してきたという谷口学長。
着任以来、若い学生たちとの触れ合いを通して「謙虚さは岩手県民のいい面でもあるが、グローバル化時代には必ずしも県や日本のためによくない」と感じたという。「たとえ間違っていても、自分の意見を述べるというたくましい学生を一人でも多く教育したいと思っている」と意欲を述べた。講演要旨を紹介する。
■講演要旨
■グローバリゼーションとは
グローバリゼーションとは、世界を一つの地球と見なして、人やもの、資本が国境を越えて動いていくこと。冷戦構造が終わった90年ごろから、グローバル化が急速に進んだが、そこには光と影の部分がある。その光を十分に生かし、影をいかに抑えるかがこれからの世界経済にとっての大きな課題。
先進国からの投資という光の部分を受けて躍進したのは中国、インド、ブラジル、インドネシア。今は先進国の方がむしろ、それらの国からキャッチアップを受けている。先進国の資本で恩恵を受けている途上国の大きな市場、資源、人口規模が、これから躍進するのは間違いない。
■2020年の世界経済の状況
90年から7年半、OECDで働いたが、その時代に「2020年の世界がどうなっているか」を研究した。「もっとも発展するのはアジアではないか」と発表したが、それに対しては猛烈な批判があった。
国内の経済学者からも、中国が日本よりも経済的に大きくなるということに対して批判が起きたが、今はそうは言えない状況に来ている。現在の日本にとって、中国は最大の貿易相手国。中国に言うべきことは言いながら、好ましいパートナーとして、日本と共に栄えようという未来志向で考えるのが建設的だ。
■グローバル化と日本
今の日本の経済や政治の閉塞(へいそく)感は、グローバル化を甘く見て、その本当の意味を十分に理解していなかったことが基本要因ではないか。
日本は金融、保険、農業、流通機構を含めて、規制の多い国だった。一方で「規制が悪い」という外圧が掛かると、単純に「規制のすべてが悪い」という考えになってしまう単純志向がある。
規制撤廃ではなく、緩和としたのは中央省庁の役人の知恵だが「規制改革」が正しいと思う。狂牛病やエイズなどの問題もあるので規制は必要だが、バランスを取った感覚で進めなければいけない。
■日本が今、もっともやるべきこと
日本が今抱えている問題の中で、まずやるべきなのは、人口減少対策。一番遅く先進国の仲間入りをした日本が今、一番早く人口減少を経験している。
急速な高度成長は、経済水準の上昇と医療設備の進歩をもたらし、高齢化のスピードを急速に上げた。日本の全人口に占める65歳以上の割合は、2025年には35%に達する。このほか、30%以上の国はイタリアとスペインだが、いずれも外国人労働者を入れていないという特徴がある。
人口減少は14、15年前に予測されていたのに、何も手を打ってこなかったところに問題がある。人口が減り高齢化が進むと年金の問題のほか、経済成長率、資本蓄積、貯蓄率の低下が起きる。OECDや各先進国は、日本がどうするかを注視している。
■外国人労働者の問題
日本の全人口に対する外国人労働者の割合は2・1%。米国は10%で、ヨーロッパも10%以上の国が多い。今後日本にも、外国人労働者受け入れの圧力が掛かることは考えられるが、そこに重点を置くべきではない。外国人労働者を入れる前に、日本の人材が余っているのになぜ使わないのか。
■女性と65歳以上の労働力を生かす
ヨーロッパの女性の学士、修士の割合は50%だが、日本は20%台。これはOECDの先進国の中で最低。アカデミックスタンダードから言うと、日本の女性の能力レベルは高いが、大学卒業後社会に出て、十分に使われているとは言えない。女性を活用しない社会は、労働力を無駄にしている。
65歳定年制もよくない。65歳以上でも健康で働ける人には、顧問やNGOなどで能力を発揮してもらう。給与をある程度減らしても、経験のある人の能力を生かすことが大事。
■日本型長時間労働の弊害
日本ほど長時間働く国はないが、それは能率が悪いということ。日本ではだいたい、30人前後が大部屋でわいわいと仕事をしている。国連やOECDでは全員個室が与えられるため、能率が上がり、皆早く帰る。
今後ますます進むグローバリゼーションの下、能力のある技術者は高給で雇われるが、能力のない人はみじめな状況に置かれる。その中で、絶えず自分の能力を高めるための生涯教育が必要になる。
ワークシェアリングを導入して、女性が働きながら育児もできるというシステムを作ることも必要。
■教育問題
教育費が日本ほど高い国はない。子供一人の大学卒業までにかかる費用は1千数百万円。国民所得に占める、国費の大学への投資割合は、OECDの中で最低の3・5%。
OECDが行っている数学と国語の調査では、日本はかつて高いレベルだったが、現在は北欧が高い結果を出している。それは北欧の国の教育への投資が多いから。スウェーデンでは私立、公立に限らず、すべての学校の授業料は国家が負担している。
今後ますますグローバル化が進むと、鉄鋼業や船舶など、日本の伝統的な製造業よりも途上国の方が比較優位になると思われる。ハイテクのソフトウエアの分野でも、ぼやぼやしていると中国やインドに追いかけられる。それを強化するために、教育への投資は必要だ。
■農業問題
現在の日本の食料自給率は、カロリー計算で40%。ほかの先進国は自給率を上げているのに、日本は1970年の60%から数値を落とした。2015年には45%に上げることを目標にしているが、2020年には日本は世界最大の食料輸入国になるだろう。
中国やヨーロッパも輸入国になり、供給能力がある米国に輸入が集中する。その米国に転変異変が起きたら、日本はどうなるだろうか。
コメの需要が減っているのに、コメだけに依存している農業の現状も問題。現在のコメの関税は490%に設定されているため自給率は高いが、WTO(世界貿易機関)は今後必ず200%ぐらいまで下げろと圧力を掛けてくる。
日本は供給保証に無関心だが、米国やEUは農家の所得保証に切り替えた。日本でも、若い人が農業でもっと所得を稼げるようにするべき。
コメの生産から生まれる所得の、国民所得に占める比率は0・1%以下。コメだけに頼る、現在の農業の政策転換も大きな課題。コメだけでなく、小麦や大麦なども作り、もっと農業の生産性を高めなければ。
■グローバリゼーションの中での日本の外交
日本の外交の機軸は対米関係だが現在、中国の米国志向は大変なものがある。10、20年後の米中関係がどうなるかを考えると、日本はアジア、特に中国、韓国との関係をどうよくしていくかが、安全保障上でも重要になる。アジアといい関係を保ちながら、日米安保を並行してもいいと思う。
東アジアサミットのような場で、首脳同士が話し合う必要がある。EUのようなぎっちりとしたものではなく、アジア的な美徳を生かした緩やかな統合体であっていい。日本は東アジア共同体の中で、おじけづいてはだめ。アジアに軸足を置きながらも、対米関係をよくできる多角的外交を進めてほしい。
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