2005年 10月 1日 (土) 

       

■ 〈英語ってどうなってんの?〉53 成田浩 受験英語も大切に

 大学受験のための英語の勉強は全くダメなのでしょうか。30年ほど前、他県のある国立大学に勤めていたころのことです。

  入試の筆記試験の英作文問題の中に「市内でもこのごろはホタルが見られます」という一節がありました。

  受験生の答案の中に、ホタルをthe insects that have light at the tailといった具合に英訳しているものがいくつかあったのです。ちょっと変な英語ですが言わんとすることは通じます。「お尻のところに明かりを持っている昆虫たち」のつもりなのです。

  すこし変でも、ホタルという単語を知らなかったとき、とっさにこのくらいのことが伝えられれば英米人は「Oh, a firefly.」と分かってくれます。

  この受験生はfireflyという日常単語は知らなかったけど、ちゃんと昆虫という単語も知っていたし、語順も英語になっていて、関係代名詞さえも使っているのです。まさに英語の仕組みは身についているのです。

  英英辞典でfireflyを引くとan insect with a tail that shines in the dark「暗いところでもお尻のところが光る昆虫」(Longman Dictionary of Contemporary English ,1987)とあります。この受験生はホタルという日常単語は知らなくても受験勉強で鍛えた英語力で、答案用紙の上で何とかコミュニケーションしようとしたのです。なかなかいい線を行っているではありませんか。わたしたち採点者はこの説明力を認めて何点かの得点をつけたのでした。

  わたしなどは、この受験生方式でネーティブに下手な英語で単語などを確かめて使っています。この受験生が将来英語が必要になり、聴く話す練習をすることになったとき、発音に慣れるのに苦労はするでしょうし、はじめは話す英語も書き言葉風になってしまうでしょうが、そんなときでも受験勉強で得た知識は英語発話のモニター役をしてくれるのです。

  (言語人文学会会長)

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