寝る前に歯を磨きなさい。これはごく自然な日本語です。この英語は、Brush your teeth before going to bed.が普通です。でも、これを日本語にすると、「磨きなさい あなたの歯を 寝る前に」と言っていることになります。
歯(tooth)は単数形です。歯を一本だけ磨くことは考えられないので
teeth(複数形)にするところもヨーロッパの言葉らしいですね。
複数形にするには〜s(〜es)をつけるのが普通ですが、このように単語の真中の発音を変える複数形は古代英語の化石としてほんのわずか残っています。
ところで、「あなたの(your)歯を…」なんて、いちいち「あなたの〜」をつけるところも英語らしいところです。
日本人が「あなたの歯たちを磨きなさい」なんて言ったら、バカじゃないかと思われます。「おれの歯にきまっているじゃないか、他人の歯を磨くわけじゃあるまいし…それに歯を一本だけ磨くのか、全部磨くのか、なんて考えたこともないよ」…。
さて、この英語をよくみると、
Brush your teethが先で、before
going to bedが後です。
日本語では「寝る前に〜」が先、「歯を磨きなさい」が後です。「歯を磨きなさい、寝る前に」という日本語も場面状況によってはあり得ますが普通はこの順番ではありません(第41回の「日本語はスクランブル言語か」を参照)。
英語では直接対話などの場合、ある情報を伝えるとき、何がどうしたのかを先にして、付随的とみなされることはその後ろに足していくという傾向があります。
すこし思いきった言い方をすれば、結論が先、説明は後ということになります。日本語は周辺の状況から説明していき、だからこうなんだと核心にもっていくことが多いのです。ですから、急ぐ場合などは「まず、結論から申しますが…」などと断りを入れるのではないでしょうか。
つまり、日本人は「ぶっきらぼう」になるのを避けているのです。(言語人文学会会長)
|