2005年 10月 7日 (金) 

       

■ 〈賢治の歌〉185 望月善次 ぼんやりと脳も体も

 ぼんやりと脳もからだも
  うす白く
  消え行くことの近くあるらし
 
  〔現代語訳〕ぼんやり、脳も身体もうす白くて、(わたし自身が)消えていくことが近くあるようです。

  〔評釈〕「歌稿B」の「大正三年四月」百四十八首中の七十六首目で「165」歌。「ぼんやり」は、「物の形、輪郭がはっきりしない様子」や主体の心理を表して「意識が集中していない様子」を示す語であるが、抽出歌においても、その両者は一体化したものだと読んだ。「脳もからだも」と、精神的な面にも、肉体的にも及んでいるのも、傍証の一つとなろう。それにしても「ぼんやりと脳もからだも/うす白く」という認識の仕方は、いかにも賢治らしい。「消え行く」の動作主についても、意味の特定は、必ずしも容易ではない。「ぼんやりと脳もからだも/うす白く」あることと、話者自身の存在の両者が考えられるからである。両者の可能性を認めた上ではあるが、ひとまず後者だとしておいた。
(岩手大学教授)


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