■ 〈阿部陽子の里山スケッチ〉19 田代山(たしろやま、945メートル)
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七時雨山と向かいあう田代山はツツジの山。年に2回、真っ赤に燃えるゴジラに変身する。秋の稜(りょう)線を赤く染めるオオバスノキ(大葉酢の木)がたくさん生えている−と、いつぞや七時雨山荘の立花さんが言った。
ピンク色なら、花の初夏がうるわしい。けれどスノキがあずき色に染まる10月、草木染めを好む人にとっては、だんだん「気になるヤツ」になってくる。
連なる小さなピークは、それぞれに名前がつけられ、西より三曲山・三方沢山(さぶじゃ)・田代山・駒木立(こまきだち)。まるでゴジラの背中のように、田代平高原の北側に、仲良く立ち上がっている。
すそ野は今も自然の牧野で、南部馬産地だった昔を物語る。草をはみ、ついササまで食べた馬たちは、知らずしらずテッペンに立っていた−なんてほほ笑ましい「駒木立」のいわれだろう。三等三角点の置かれた田代山より42メートル高く、立てば浄法寺町のかなた、折爪岳や八甲田らしき山々へ目が届きそうだった。
登山口は、安比と奥中山をつなぐ県道30号線上に並行し、二つある。初めて登る人は、この快適なドライブコースをアッという間に抜けてしまうので、スピードダウンが肝心だ。
安比から進入し、「田代山つつじサン燦(さん)道口」の標柱をおくミニ広場を基点にしたい。すぐ山道に踏みこまず、どこかヨーロッパを思わせる田代平高原の車道を1500メートルばかり歩こう。これぞ一石二鳥、ストレッチ効果あり!
運がよければ、牛の水場をまかなう「北上川北限湧水(ゆうすい)」の清流を発見できるかもしれない。また、新築工事中(2005年10月31日完成予定)のトイレと駐車広場はビューポイント。足を止めずにいられなくなる。
右手、こげ茶の建物で車道歩きを終了。真向かいの牧草地の轍(わだち)に入り、雑木林のジグザグ道を1時間登る。セスナ機事故(昭和42年)の慰霊塔を過ぎたあたりで視界が開け、パラグライダーの飛び出し草地から、ツツジとササ原の尾根道に上がる。もはや、ロケーションはほしいままだ。
尾根を右折し、さきに駒木立へ登る。それから引き返し、田代山〜三分沢山〜三曲山と、軽いアップダウンを繰り返す。
地形の関係で、田代山にはいつも西風が吹きつける。ゴジラの背中をかっ歩すると、身もこころもふんわり、地面から持ち上げられるのだった。ひと巡りに四時間かけると、じょうとうな秋日和がたっぷり味わえる。
見ればゴジラは、赤く、赤く−。夕日に燃えたっていた。「ガオーッ…!」
(盛岡市在住、版画家)
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