2005年 11月 1日 (火) 

       

■ 〈英語ってどうなってんの?〉62 成田浩 この部屋でピアノがある?

 「この部屋でピアノがある?」

  この日本語は変です。前回、「て、に、を、は」などの助詞は名詞の後に置くので、言語類型上は後置詞とも呼ばれると言いました。英語は前置詞を持っているわけですが、両者の使い方の食い違いには日本人も英米人もお互いに戸惑うことが多いものです。

  「この部屋でピアノがある」は誤りで、「この部屋に…」ですね。一方、「この部屋にピアノ演奏会がある」は変で、「この部屋で…」です。英語ではどちらもin this roomです。

 この違いは何でしょう。日本語を学んでいる外国人に説明を求められたらどう答えたらいいのでしょう。日本語では「〜に」と「〜で」が場所を表す場合だけを取り上げてもさまざまな用法がありますが、この場合は次のように答えることができます。

  ある場所に何かがあるとき、それが物とか人や動物などの個体であるときは、「この部屋にピアノ、いすがある、聴衆がいる」のように「〜に」を使いますが、同じ部屋でも行事があったり出来事が起こったりしたときは、「この部屋で演奏会、停電がありました」のように、「〜で」を用います。

  こんなこといつ習ったっけ?小学校の国語の授業でも、「〜に」と「〜で」の正しい使い方を練習したことなどありません。「あすはこの音楽室に合唱をします」なんて間違えないように練習したことはありません。

  わたしたち日本人はこの難しい区別を生得的に、いわば、本能的に、気がついたら覚えていたのです。外国人も日本で生まれ育ったら無意識にそうなりますが、大人になってから日本語を学ぶ場合は意識して練習しなければなりません。日本語はかなり難しい。でも、それはお互いさま。

  さっきの英語は、「この部屋にピアノがある」が、There is a piano in this room.で、「この部屋でピアノ演奏会がある」も、We have a piano concert in this room.です。(言語人文学会会長)





 


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