2005年 11月 3日 (木) 

       

■ 〈校長室の窓から〉20 野口晃男 不思議な月を見た子

 それは11月のある夕方のことでした。

  自転車に乗って遊んでいた2人の男の子がいました。そのうちの1人が、校長室の窓から外を見ていたわたしに話しかけてきました。

男の子「月が変な色をしているよ。何か悪いことが起こりそうだよ」

わたし「それを不吉な予感というんだよ。あなたの自転車にはライトがついていないから、特に気をつけないといけないよ」

男の子「ぼくもう帰ろう」

わたし「そうだね。こんなときには、家の中で静かに本を読んだりしてすごすといいんだよ」

男の子「はい」

わたし「気を付けて帰るんだよ」

男の子「はい。さようなら」

  その子は、校庭を斜めに横切って急いで暗闇の向こうに消えていきました。

    ◇   ◇

  初めて見た不思議な色に輝く月。まだらな雲の間から、ぼんやりとした輪をつくって不思議に輝いている月。

  その子はきっと、人間の力ではどうにもならない不思議な力が存在するのを肌で感じ取ったのでしょう。

  光の屈折のことも、空気の層によって起こる自然現象のことも、雲についてのことも、一切の説明は必要ありませんでした。

  なぜならその子が、今感じていることは、今でなければ感じることのできない非常に大切なことのように思ったからです。

  あすから児童会が中心になって進める読書運動が始まります。本の中で「青白く光る月」とか「月の光で夜道を行く」とか「不吉な予感がした」とかいう文に出合ったとき、その子はきっと、このときに感じたと同じ感じを体中に感じるに違いありません。

  そして、本の中にもどきどきする素晴らしい世界があることを知ることになるでしょう。

(盛岡市教育相談員)


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