|
天高く澄みわたり菊香る11月である。旧暦の呼び名は霜月、24節気では7日が立冬、22日は小雪だ。
数日前、京都の蓮華王院本坊の妙法院門跡から、はやばやと平成18年の宝暦が届いた。蓮華王院は御堂の柱の間が33あるところから俗に三十三間堂と呼ばれているお寺だ。たいていの人は修学旅行で見ているだろう。
内陣の中央には湛慶作の本尊である十一面千手観世音菩薩(ぼさつ)が安置され、その左右には500体ずつの等身大の千手観音が並んでいる。合計1001体の整然とした仏像には全く圧倒される。荘厳というか、粛然というか、おのず頭を垂れて合掌し、その慈愛にみちたお顔をうち仰ぐのみであった。拝見したその夜、ぼくは感動をこのように歌に詠んだ。
蓮華王院三十三間堂にふ り仰ぐ千体仏にわがこゑ もなし
円光を背に立ちおはす一 千の観音この世のものと 思へず
伏し目なる慈悲のまなこ を注ぎ給ふ千手千眼丈六 菩薩
火を吐きて風神雷神荘厳 の一千体のほとけ護法す
二十八部衆憤怒の眼光に 汚れしわれを睨み見据ゑ る
外陣より望めば遥かけぶ らひて千のみほとけ静ま りおはす
三十三間堂は通し矢でも良く知られている。お堂の西側の120メートルにわたる広縁で、南から北へ一昼夜にわたって弓を射る競技だ。天下の武芸者の栄誉と執念をかけた舞台だった。貞享3年(1686)紀州藩の和佐大八郎が13053本、通し矢8132本という大記録を立て、その優勝額が、いまも掲げられている。現在でも日本弓道連盟の通し矢にちなむ行事が続けられているそうだ。
※
先日、ぼくは初めて日本現代詩歌文学館(北上)西に隣接して建設された「日本現代詩歌研究センター」を見学する機会に恵まれた。鉄筋コンクリート3階建て、延べ面積1930平方メートルで研究センターと書庫だ。全国から寄せられた詩、短歌、俳句、川柳などの図書、原稿、色紙、軸、手紙その他の資料が現在、何と90万点にのぼっているという。ぼくが行ったときには、大きな室に全国から寄せられた未整理のダンボールが山のように積まれていて、毎日のように届くという。書庫には短歌では「明星」「アララギ」「創作」「心の花」「多磨」などが整然と並んでいた。ぼう大な資料の入力業務に5人の女性オペレーターががんばっていた。
有名、無名を問わぬ収集に努め、いまや日本で唯一の文学館として展示、公開し、全国の文学館、大学図書館、研究者、出版社、学会、団体等から照会が相次いでいるという。すばらしい日本現代詩歌文学館が北上にあるということを誇りに思う。
菊咲けり陶淵明の菊咲けり 山口青邨
牛市の果てて胃に沁む山葡萄 小林輝子
葉鶏頭月若ければ眠りけり 池元道雄
(北宴同人)
|