■ 〈水墨画の魅力〉6 橋本哲郎 文房四宝の周辺と筆
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文人が読書をし、絵を描く書斎が文房と言われます。文房で使われる用具(文房具)を文房至宝(四宝)と呼び、財産として大切にしてきました。四宝とは硯、墨、筆、紙をいいます。中でも墨と紙は非常に気難しく、保存や状態や天候によってもまた相性によってもデリケートに変化します。解明できない面白味を持っており、これが魅力でもあるのです。
最初に文房四宝の周辺から考えてみると
・印材=作品に押す落款の材料で、古くは金銀銅も使われましたが、今は石が主流で竹や象牙、陶製もありますが、中国産石印材では鶏血石と田黄が王様と思います。
・印泥=日本では印肉で奈良の木下照僊堂ぐらいしか作っていないと思います。ほとんど中国産が出回っており、朱色が主ですが古色とか黒藍白などもあります。
・印矩=印を押すとき、ずれないように使います。
・筆筒=筆立て、筆巻、持ち運び用の簾れ。
・筆架=筆格とも言う筆をつり下げるものです。
・筆洗=筆を洗う小鉢など。
・水滴=水孔が2つあり、一滴二滴と水を垂らす水盂、水丞、水注、水指(差)、硯滴、硯蟾などで用途はほぼ同じです。
・墨床=墨を置く台。中国で主に使います。
・墨壷=中国では墨を一度墨壷へ入れてから使います。筆の保存のためと思います。
・臂閣、秘閣=縦書きで左行に移っていくとき巻物など半乾きをこすり汚すことを防ぐために使います。
・文鎮、硯屏、怪石
などその他いろいろあります。
さて本題に入り、文房四宝に移りたいと思います。まず筆です。
人間がいくら頑張っても獣の毛と同じものは作れないと言います。人造の糸で作った筆はカラス口で引いたような表情のないもので、やはり筆は獣毛にはかなわないようです。
原料は、羊毛、山馬、紫毫、鹿、ブタ、イタチ、イノシシ、クマ、スカンク、黒テン、ネコ、鶏、竹、草、木、胎毛など。またクジャク、ハクチョウ、白サギ、アイガモといった水鳥は水を弾き墨の含みが悪いのですが、逆に水につけて使うと予想外の面白味があります。
水の含みのよい羊毛と腰の強いイタチの毛を合わせたものや用途に応じた筆毛もたくさん作られていますので、自分の作品に合った筆を探してみるのも楽しいと思います。
字を書く筆が圧倒的に多く、水墨画を描くといっても、理解してもらえず、玉毛(ネコ)や竹の筆を求めたとき何を書かれるんですかと店員に不思議がられたことがあります。
西林堂で小森林先生とお会いしたとき「水墨画を始めたんです」と話したら、付立筆を10本ぐらい取り、「これを使ったら」と渡してくれました。道具をけちるなとの教えと求めて帰ったことを思い出しました。
筆を作る技術は日本が上手だと思いますが、価格は中国にかなわないようです。
水墨画を始めたころ、よく山馬筆を使いなさいと教えていただきました。筆の中では硬い方で山馬は鹿の毛の中でも特に粗い毛といわれます。中国の黒龍江省、吉林省の山奥にすむ鹿とも、トナカイ、カモシカの説もあり、あまりよく分かりません。
変な筆では鶏の毛があります。ふわふわしていて水をつけると腰がなく、めったりとして何を書いたらいいか迷う筆です。
午の耳の毛という筆を手に入れました。山馬筆と羊毛の中間ぐらいの硬さで使いいい筆です。雀頭筆は短鋒筆の中でも特に穂先の短い雀の頭のような筆で、正倉院に残る筆がこれです。小さい楷書に都合よく写経に向くといわれますが、巴人先生は山を描いたとき、この筆で点を打つのに使うと喜んでいわれました。胎毛筆というのもあります。水につけるとフニャフニャで使いづらい筆ですが、生まれて初めて切った髪は毛先が細く一生に一度しか取れないので貴重です。誕生記念として名入れで作ってくれます。
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