2005年 11月 9日 (水) 

       

■ 南部杜氏にまた称号 あさ開の藤尾正彦さんが現代の名工に

     
  卓越した技能者(現代の名工)の表彰を受けるあさ開の常務で杜氏の藤尾正彦さん  
  卓越した技能者(現代の名工)の表彰を受けるあさ開の常務で杜氏の藤尾正彦さん  
  厚生労働大臣が表彰する05年度卓越した技能者(現代の名工)に、あさ開の常務で杜氏の藤尾正彦さん(61)が選ばれた。9日、東京都港区の明治記念館で表彰を受ける。藤尾さんは紫波町出身で酒造り33年の経歴を持つ南部杜氏。酒造技術の研さんに努め、培った知識・技能で岩手の清酒の品質向上に貢献したことなどが評価された。全国新酒鑑評会では連続金賞受賞記録12回の偉業を達成している。麹(こうじ)の研究では、日本杜氏組合連合会主催の懸賞論文で県内杜氏で唯一、1等を受賞するなど品質向上の取り組みに余念がない。

 藤尾さんが杜氏の修行を開始したのは盛岡農業高校を卒業した18歳の冬。「家は農業で父や叔父は冬場は、杜氏として出稼ぎに出ていた。最初、小遣い銭を稼ぐ程度に考えて手伝いに行った。当時の杜氏の世界は封建的で厳しい社会だった。そのときは杜氏になるとは思ってもいなかった」と振り返る。

  冬場は山梨県の酒蔵で数年、こうじづくりを担当し体で徹底的にこうじづくりを学んだ。その後、24歳のとき県内の酒蔵での酒造りを始めた。「わたしが杜氏では一番下。また一からスタートした。そのうち、あさ開と合併した。こうじ担当になった。自分の得意分野。しかし思うようなこうじができない。失敗を味わった」と言う。

  藤尾さんは、このときなぜこうじがうまく出来ないか、その原因の解明に力を入れた。徹夜もし徹底的に調べを開始。県の醸造試験場にも通った。その結果、水分の吸収具合、蒸気圧の調整などが原因だったと分かった。

  35歳のとき、この研究を基に酒質向上のための米こうじ製造改善策を発表し懸賞論文1等を獲得した。「失敗をそのままにしておきたくなかった。どうしても自分で納得したかった。この失敗はとても良い経験になった。後の金賞連続受賞につながっている」と言う。

  藤尾さんはその後、39歳であさ開の杜氏の頭として酒蔵を任された。以後、生産部長、常務として重責を任された。会社の管理者の役職をこなしながら杜氏の仕事も兼務してきた。

  この12年間連続金賞の大記録を樹立した。「遅いスタートだったが吟醸酒研究会を立ち上げたり、県農業試験場が中心になり酒造好適米への取り組みも始まった。酒の品質はこうじで決まる。1本のもろみを仕込むために4回こうじをつくらなければならない。精米から仕込みまで6カ月かかる。不眠不休の仕事が多い。毎回、全神経を使う」と語る。

  金賞連続受賞であさ開のブランドが浸透し、首都圏のデパートからの高級清酒の引き合いが急増している。藤尾さんは「今回の表彰は大変にありがたい。これは酒造りに協力してくれた社員の力の結集。清酒業界は厳しい状況だがおいしい酒は値段が高くても売れる。アメリカを中心に海外にも広がっている。これからはさらに質の高い酒を造り貢献したい。技術指導も行い杜氏を増やしたい」と話していた。


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