2005年 12月 5日 (月) 

       

■ 〈賢治の歌〉243 望月善次 秋風の頭の奧にちさき骨

 秋風の
  あたまの奥にちさき骨
  くだけたるらん
  音のありけり
 
  〔現代語訳〕秋風の中に吹かれている、頭の奥で、小さな骨が砕けたような音がするのです。

  〔評釈〕「歌稿〔B〕」の「大正三年四月」一四七首中の百三十三首目で「215」歌。「歌稿〔A〕」では、同様の作品が墨で抹消されている。(ただし抹消前の形も見えている)作品成立の契機が、「秋風」自体にあったのか、それとも「くだけたるらん音」の自覚にあったのかは、可能性としては、両方の場合が考えられよう。この両義性は、一首の構造の上にも反映されていて、初句の「秋風の」は、直接には第二句の「あたま」に掛かるわけであるが、「秋風の〜音のありけり」の拡大解釈の可能性もあって、new criticなどの言う「曖昧(あいまい)性(ambiguity)」の例ともなろう。「風」は、賢治にとって重要なイメージであるが、紛れもなく「秋風」も、その一つであることを示している一首でもある。
(岩手大学教授)

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