■ 〈特集盛岡ブランドって何だろう〉座談会 もっと元気のいい盛岡人を
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■盛岡市の推進計画
関口 盛岡市のブランド推進計画の案を見て感じたこと、ここはもっとこうあるべきというところはありますか?
南幅 初めて計画を見た時、普通のブランド戦略と違って、あまりに壮大で、これはちょっとブランドにはならないなと思いました。でも、こうして全部示されると市民も考えますよね。じゃあ、盛岡っていったい何なのって。自分の考える盛岡ブランドはこうだって。意識づけという点では、かなりの波及効果がある。こういうやり方もありなのかなと思えてきました。
わたしの息子は10歳なんですが、わたしと30歳の年齢差があるわけです。息子がわたしの年齢になったときに、わたしが素晴らしいと思った盛岡を残してやれるだろうか、どうすれば残せるだろうかといつも考えます。それが自分の使命でもあると思うんです。
ブランドづくりのために、この2年間で、かなりの予算も割く。市民に問題意識を持ってもらうためには、非常にいい出だしだったのではないかと思いたいですね。
中野 率直に言って(計画書が)厚すぎますね。2、3枚でいいんじゃないかと思いますね。
山内 これをセレクトして誰がやるのかということですね。そっちの方が大変なんじゃないかな。
中野 10年ほど前、盛岡が世界で1番、日本で1番になる方法ないかなって思ったときに、点字メニューを作ろうとしたんですよ。盛岡に数千軒のラーメン屋、そば屋、飲食店がありますよね。その中で、せめて半分、3千軒分でも作ったら、そういうまちは、きっとほかにはない。点字ボランティアや店員の方にも協力してもらって進めました。
当時、856人の全盲の方が住んでいましたが、その方たちだけのためではなくて、盛岡は優しいまちなんだということを全国の方々に知ってもらう。視覚障害者の全国大会を盛岡に誘致してもいいんじゃないかなどと、いろいろ考えた。
さまざまな事情で、道半ばのままになっているんですが、そういう動きがもっと必要なんじゃないかなと思うんですよね。身近にあって気付かないもの、自分たちのまちを誇りに思えるようなまちにしようという運動も一つの意識向上につながる。これは子供からおじいさんまで誰でもできるんですよ。広く浅くみんなが参加できる盛岡のブランドづくりが必要なんじゃないでしょうか。
山内 挫折感を受けないような取り組みにしてもらいたいね。欧州から帰ってきた時、盛岡では「水のまち盛岡」ということで、中津川で噴水をやっていたんですよ。みじめな噴水でね。バルセロナには世界一の噴水があって、それを見ているから余計に、そう思ったのかもしれないが、水のまちのキャッチフレーズが台無し。そんなことなら初めからやらないほうがいい。アドバルーン揚げたら最後まで責任持ってやってもらいたい。
関口 盛岡ブランドにリストアップしたものを見ると、ブランドと名付けるには、ちょっと躊躇(ちゅうちょ)するようなものも挙げられているんですよね。ほかの地域では、もっとすごいものがあるんじゃないかと。それを盛岡ブランドと言ってしまっていいのかと。
山内 隠しておきたいものもありますよね。これだけはPRしなくていい、地元に来なければ絶対に理解できないというものを用意しないと。全部さらけ出してしまったら勝負にならないわけですよ。肝心要は、盛岡に来て泊まって、酒を飲んで初めて感じることです。
関口 中野さんがおっしゃるように、地域が誇りに思えること、それこそがブランドと呼べるものだと思うんですね。そういうものを作る努力が必要なのでは。
ブランドは、見える形にこだわらなくてもいいんじゃないかと思う。何かの運動、あるいは人を育てるとかね。よその市の商店街はどこもシャッター通りになっているんですよね。盛岡は、みんないいところと言うけれど、本当にいつまで商店街が生き残れるかと思えるような状況。どんなブランドをつくっても、中心市街地がシャッター通りだったら、観光客は来ないと思います。
山内 確かにね。わたしは行政がね「日曜も店を開けろ」とか言うべきだと思いますよ。経営が大変なところには、アルバイトの店番を雇えるよう補助をして、半年ぐらいやってみれば元に戻りますよ。行政の補助、税制、ほんのちょっとしたきっかけで動き出すと思いますね。
まだ、盛岡はいいほうですよ。シャッターの下りている率からいえば、青森や弘前はひどいです。
関口 やはり、そうお感じになられますか。
山内 特に日本海側のまちはひどいですね。鶴岡、酒田など有名な観光都市もシャッター通りなんですよね。
中野 大通も物販店が、どんどん飲食店に変わっていく。太田市でしたか、駅前をきれいに整備したんですが、肝心の入居者がいない。結局、商店街にするはずだったのがネオンいっぱいの歓楽街になって、行くとびっくりしますよ。
関口 打開策はないんでしょうか。
山内 いや打開策というよりも、関係者がいいところだけでなく、みにくいところもよく研究するべきだ。大通の裏通りでは、安心して歩けないようなキャッチセールスをしているところが多い。あれでは観光客が来れない。泊まりがてら一杯、飲みに立ち寄れる場所じゃなくなってきている。そういうところも是正していかないと、ブランド、ブランドと言っても駄目でしょう。
■どういうビジョンを描くか
関口 そろそろまとめに入ります。盛岡の地域ブランド戦略を進めていくとしたら、どういう方向がいいと思いますか。計画では「本物」をキャッチフレーズにしていますが。
南幅 話を聞いていて、なるほどなと思ったのは、たとえば盛岡っていったいどんなまちなのかと聞くと日本で最も安心して暮らしやすいまちですとか、人にとても優しく、人柄が優しいだとか、時間が止まったようにゆっくりしているイメージが多いんですよね。それは非常に大切に持っていったほうがいいんじゃないかと思うんですね。
たとえば遠野の場合は、柳田国男が紹介したために、すごく有名です。じゃあ、遠野は何が有名なのというと「何もないよね」という声もよく聞きます。でも、その何もないのが好きだと毎年、出掛けている人がいる。人によっては神の住むまち、山々の神の精霊が守ってくれている素晴らしい土地なんだ、選ばれた土地だという人もいます。「何もない」というところにも、ブランドの一つの要素がある。遠野の人と仕事をしていて、行政の人が何回も口にするのは「遠野人の心を大事にしたい」ということ。遠野のブランディングをやっていると、「遠野の魂」というものが、すごく入ってくる。
逆に盛岡の場合は、いろいろなものがありすぎて、何を取ったらいいかとなってしまう。原点に返って、時間がゆったりしていていいとか、玉山と合併し本州一寒い藪川も盛岡になるので、本州で最も寒い県庁所在地と言い切ってブランド化してもいいんじゃないかなと。イメージ戦略ですが、その辺りからつくっていってもいいんじゃないかなと思います。
関口 もう少し絞り込んだ方がいいということでしょうか。
山内 遠野は都市化されないところをブランド化していると思います。盛岡というのは中途半端ですね。大都市でもない、かといって、カントリーをブランド化できるかというと、それは無理でしょう。わたしはブランドというのが引っ掛かっちゃうんですね。なんかそこで一つにくくってしまうことに問題があると思ってしまいますね。
関口 固定化した盛岡のイメージを打ち出していくのは、もともと難しい…
山内 そうですね。もしやるならもうちょっと慎重にやるべきですよね。
関口 それでその材木町とか、今ある既存の資源、ブランドが打ち消されてしまうことが問題であると。
山内 ある意味そうですね。
中野 難しいところですけどね、山内さんのおっしゃる通りです。中途半端さを売り出すわけにもいかないしね。だからといって、前に進まなければ意味がない。ということは、何かをやらなければいけない。たとえばブランド推進計画について、ブランドという言葉は好きではありませんね。個人的にわたしは、ずっと盛岡で生まれて、育ち、ほかで暮らしたことがないんですよ。根っからの盛岡人。盛岡好きなんですよ。盛岡以外の方が来て、政治なんかを動かそうとするのは嫌なタイプなんですね。
ずっと盛岡に住んでいて感じることは、もっともっと元気のいい盛岡人が必要だということ。その人たちが活発に動くことによってブランドというのが出てくるんだと思います。絶対そうですよ。正直言って、老舗にあぐらをかきすぎてしまったり、ちょっともうかったからといっててんぐになってしまったり。どうも、この小さな盛岡というまちで、安心してしまっていることの落とし穴があるような気がする。どこのまちもそうだと思いますね。だから、もっともっと自分のまちを大切にするためには、自分たちのまちをもっと見直して、何か進む道をいろいろな業界の方たちからやっていただかないといけないと思うんですね。
わたしは、自分が会社のために一生懸命尽くすことが、社員の雇用や幸せにつながって、自分の会社が発展することが、市の発展につながるはずだと信じています。
いろいろな方の話を聞き、いろいろなまちづくりのかけらの一つにでも、力になりたいと思います。
うちの会社で養護学校の生徒を少ないのですが毎年採用しているので、卒業式に招待されます。ある時、PTA会長さんが「どうしてわたしの子供はきょうが卒業式なんでしょうか」と尋ねてきた。「わたしの子供は18歳だが、本来は小学校2、3年生の力しかない」と言われた。なぜ盛岡市が、そういう子供たちをあと8年受け入れる場所を用意してやらないのかと思った。盛岡だからできること、盛岡で一番最初にやるべきことがあるんじゃないでしょうか。東京や民間の成功事例をまねするのではなくて、今困っていることとか今したいこととかを広く聞きながら、まだ誰もやっていないことをやるべきだと思うんです。それが自信につながり、まちの活性化につながると思います。何か一つ、きらりと光るものが欲しいと思います。
茶髪にしてピアスしてうろうろしている兄ちゃんたちいっぱいいるじゃないですか。もっとね、ああいう人たちに意見を聞いたらいいと思いますね。今のまちをどうしてほしいのか、ストリートをどうつくったらいいのかを。
山内 そうですよね。
中野 彼らは一度や二度失敗しても立ち上がってくるんですよ。座っている人は失敗したくないから座っているんです。(おわり)
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